研究課題/領域番号 |
19K01876
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
北原 康富 名古屋商科大学, 経営学部, 教授 (80635772)
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研究分担者 |
矢本 成恒 名古屋商科大学, 経営学部, 教授 (10635775)
椿田 貴史 名古屋商科大学, 経営学部, 教授 (50350997)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 創造性 / イノベーション / オープンイノベーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、特定の技術に関する専門的知識を持つ専門家と、それを持たない非専門家の協働が、イノベーションに有効に働くという仮説を検証することである。具体的には、知識の典型性とアイデアの創造性との関連を理論的に検討した上で、専門家のみ、および非専門家と専門家の協働によるアイデア創出の実験を実施し、協働によるアイデア創出がより創造的なアイデアをもたらすことを実証することを目的としている。 本研究は、①事前調査、②仮説の導出と実験デザイン、③サンプル企業における実験、④他業種による実験、の全4フェーズからなり、前年度は、③の一部を完了しているため、今年度は、③の後半を実施し、データ分析および検討を行った。具体的には、共同研究の契約企業2社の専門家、および社会人大学生を被験者とし、専門家(1群)、専門家による技術知識を与えた非専門家(2群)および専門家による技術知識を与えなかった非専門家(3群)で新製品のアイデア創出課題を教示し、各群の被験者が発想したアイデアの創造性を評価した。この研究成果は、2019年6月に日本開発工学会第二回研究発表大会において発表した。次の実験として、専門家が、非専門家のアイデアを参照することによって、アイデア創造性に正の影響を与えるかについて、実験を通じて調査することを計画した。これにより、企業の専門家が、非専門家の発想を利用することの有効性を検討することを目指した。実験の一部は終了しているが、2019年3月よりコロナによる自粛の影響を受け中断している。 さらに、創造性の測定の妥当性評価にアルファ係数を用いるAmabileの方法を補完する確認的因子分析の応用を提唱し、実験結果を用いて検証を試みたところ、統計の専門家より因子分析の誤用であるとの指摘を受けたため、心理学に限定し心理測定の社会的妥当性に焦点を当てていくこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概要で述べたように、昨年度の後半は、より実務的な実験デザインを行い、研究協力企業と共同で、当該企業の新製品開発2分野を対象として、アイデア発想課題を作成した。その上で、社会人大学生12名により非専門家としてのアイデア発想をさせ、専門家へのプライミングデータの収集を行った。その次の段階である、専門家2群によるアイデア発想実験は、協力企業のテレワーク等の事情により中断している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の中核となる調査は、実験によりデータを収集するものであり、通常の環境下における専門家のアイデア発想に近い環境において実施されることが望ましいため、テレワークの状況下での実施が困難となっている。しかし、今後テレワークのスタイルが常態化する可能性や、研究の推進などの理由から、テレワーク環境下での実験を実施する方向で検討を始めている。 また、創造性の測定にアルファ係数を用いる方法を補完するための確認的因子分析の応用は、統計学的な観点からの検討は批判に耐えられないので、今後は、Amabileによる創造性測定が孕む革新性について着目し、その方法論的意義を検討する。すなわち、これまでの心理学においては、心理学的構成概念が測定対象として措定されてきた。これには様々な批判がある。Amabileの創造性の測定アイデアは心理学的構成概念によらず、専門家の観点から創造性を判断する観点を提供している。最近の心理学においては、心理学的な構成概念の心理測定の妥当性が問題視され、測定された数値や結果の「社会的妥当性」が希薄なことや、それを柔軟な観点から検討することの重要性が指摘されている。Amabileの方法論は、こうした心理測定一般について、革新的な意義を持つ方法論であると考えることができる。現在は、この点を整理している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究に係る出張および物品費が生じなかったため。 次年度に計画する出張および必要な物品に充当する予定である。
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