研究課題/領域番号 |
19K01877
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
三輪 卓己 京都産業大学, 経営学部, 教授 (10440869)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 知識労働 / 感情労働 / 表層演技 / 深層演技 / 自律性 |
研究実績の概要 |
知識労働と感情労働の先行研究をレビューするとともに,二つの労働をともに行っている職種についてインタビュー調査を実施した。対象とした職種は,看護師,介護士,教員(小学校,大学),ならびに社会保険労務士(兼コンサルタント)である。 それらの職種において二つの労働の増進がどのような形で起こったか,またそれによって労働者にどのような積極的な影響(例えば自律性の向上や仕事の高度化,能力開発の進展)があったのか,あるいは消極的な影響(例えば負担の増加や心理的な消耗等)があったのかを調査・分析した。 今年度の調査においては,看護師については自律性の向上や高度に専門的な看護師の増加など,積極的な効果が見られた。また介護士については,職員の知識労働者化や能力開発に熱心な施設・法人において,職員の定着やキャリア開発が進んでいることが明らかになった。一方,教員については積極的な効果もいくつか見られたものの,保護者や無気力な学生への対応が増えたことによる,心身の消耗が進んでいることが明らかになった。最後に社会保険労務士については,専門知識のみに執着する人は感情労働が苦手であること,またそれ以外の人にとっては,知識労働と感情労働は相乗効果をもっており,一方に自信を持つことが他方に積極的に取り組む原因となり得ることが明らかになった。 全体を通じて,知識労働と感情労働を行うことが良い影響を労働者に与える可能性があるが,一人で深層演技を行う仕事や,同僚からのサポートが少ない職場では消極的な影響が出やすいことが明らかになった。また感情労働に関する有効な能力開発の方法が明らかになっていないという問題も浮かび上がったといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの影響でインタビューできる人が制限されているが,オンラインインタビューをすることによって,何とか最低限の調査が実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,現在の調査を継続しながら,対象となる職種を拡大する予定である。具体的には,キャリア・コンサルタント,提案営業の担当者,人材派遣や教育サービスの営業担当者などである。 また,調査のテーマとして,①知識労働と感情労働が相互に関りを持ちながら労働者に積極的,あるいは消極的な影響を与えるに至るプロセスの解明,②そのプロセスの背景となり得る組織的要因(例えば相互支援や能力開発施策の多さ等)の探索,を掲げるつもりである。分析方法として,現段階ではM-GTAを想定している。
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