今年度の研究実績としては、「コンテンツ産業におけるプロデューサー・システムとビジネスモデルの関係-深夜アニメのケース-」『岐阜協立大学論集』第55巻第3号が挙げられる。本稿は、コンテンツ産業における効果的な製品開発がいかなるものなのかを明らかにするという長期的な研究目的の中で、昨今のビジネスモデル研究の知見を導入し、プロデューサー・システムの組織デザインとビジネスモデルの関係について、深夜アニメという1つのケースを用いて検討した。取り上げた深夜アニメの『ブラック★ロックシューター』のケースから言えたことは、商品は映像パッケージおよびフィギュアへ、出資者主導のプロデューサー・システムへと変容したことであった。出資者主導のプロデューサー・システムというと、テレビCMのプロデューサー・システムがある。詳細は山本(2016)で考察しているが、 クライアント(広告主)のCM作品内容への強い関与が確認されている。『ブラック★ロックシューター』のケースでは、作品内容への強い関与については不明であるが、出資者は製作委員会での主幹事会社としてビジネスモデル全般の音頭をとっている。テレビCMにおいて作品内容への強い関与が見られることが自社商品を売るためのビジネス上の都合であることを考えると、出資者としてコントロール下において主導権をとりたい意向といったものが共通点として挙げられると思われる。また、テレビCMは主に15秒の無料で視聴できる作品、および今回の『ブラック★ロックシューター』も50分の無料で視聴できる作品、つまりどちらも別商品を販売するための無料の単体作品であることが共通している。このことは、コンテンツ産業において、扱う製品が同じような属性を持つと、同質な・近似なプロデューサー・システムが採用されることが示唆される。そして、採用される収益モデルも似通ったものとなることが示唆される。
|