研究課題/領域番号 |
19K01889
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
星野 裕志 九州大学, 経済学研究院, 教授 (60273752)
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研究分担者 |
林 倬史 立教大学, 名誉教授, 名誉教授 (50156444)
岡田 昌治 九州大学, ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター, 学術研究員 (50363297)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ソーシャル・ビジネス / 社会的課題の解決 / 持続的な成長 / CSR / SDGs |
研究実績の概要 |
令和元年度~令和3年度の3年間の研究プロジェクトにおいて、開発途上国における事業展開の事例の分析、「社会的課題解決に貢献するビジネス」のモデル化、今後の新規市場 参入に向けた具体的な提言の3段階で研究を進めるとともに、企業との具体的な実証実験を行うことを計画した。具体的な方法として、1 ソーシャル・ビジネス を研究する研究機関との情報や研究成果の共有及び共同研究、2 開発途上国で事業を展開する国内外の企業へのヒアリング、 3 多国籍企業と連携を推進するバン グラデシュのグラミン・グループやBRACなどの非営利組織へのヒアリングを当初より想定していた。これらの多角的かつ重層的なアプローチによって、社会的課 題解決と営利の追求を同時に実現するビジネス・モデルの実情を明らかにできると考えたからである。 特に研究計画2年目になる令和2年度は、アジアやアフリカなどでソーシャル・ビジネスを展開する企業と非営利組織のヒアリングを通じて、開発途上国にアプ ローチする上での成功要因と障壁を抽出しながら可能性と限界を明らかにし、モデルを構築することを予定していたが、新型コロナウイルスの中で、令和元年2 月のバングラデシュ出張を最後に、海外出張が困難な状況になり、同様に国内においても企業へのヒアリングを目的とした出張やセミナー参加などに、大きな制約が生じている。 研究期間を令和4年までに延長すると共に、WEB上での情報収集で、実地調査を補完することを意図しているが、容易ではない状況にある。 具体的な手法を研究するべく、所属する九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターで、ソーシャル・ビジネスの啓発と異なるセクターの連携を目的とするセミナー「SDGs ソーシャル・ネッ トワーキングラボ」を開催することで、企業の知見を共有し広く発信をする機会を得ているが、当初の計画には届いていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究プロジェクトで構想していた研究計画では、研究対象をアジア、アフリカなどの開発途上国において、社会的課題解決に貢献する手法を用いて事業を展開し、新規の市場参入を成功させている企業に設定していた。 またこれらの企業及び連携する非営利組織へのヒアリングを実施することで、今後のソーシャル・ビジネスによる事業展開のモデル化の基盤とすることを意図していた。 しかし、研究開始と同期するように、3年目に入ったコロナ禍にあって、海外出張のみならず、国内出張も困難な状況にあることから、情報収集とデータの共有など、研究計画の実施に大きな制約が生じている。代替的に、可能な範囲で企業へのヒアリング、WEBを通じた情報収集、セミナー開催を通じた知見の獲得などの活動を行なっているものの、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、研究には大きな遅れが生じている。 そのことから、当初は令和3年末の終了を予定していた研究計画を令和4年末まで延長することを申請し、承認されている。3ヵ年の研究計画について抜本的に見直しを行いながら、可能な範囲で研究のアプローチ方法とアウトプットのあり方について、再構築していくことを現在検討している。 前述の通り、研究の促進と公開については、所属する九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターで、ソーシャル・ビジネスの啓発と異なるセクターの連携を目的と「SDGs ソーシャル・ネッ トワーキングラボ」を開催することで、企業の知見を共有し広く発信をする機会を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度が本来3ヵ年にわたる本研究プロジェクトの最終年度に当たっていたが、初年度と2年目の研究計画が、コロナ禍のさまざまな制約で大きく立ち遅れていることから、令和4年度までの4ヵ年の科学研究費助成事業の延長申請を行い、承認を受けることができた。 本研究計画での想定では、「事例の分析」、「ビジネスのモデル化」、「具体的な提言」の3段階のプロセスを経ることで、具体的なヒアリングを含めたリサーチで得られた知見や考え方を次の段階に反映させ、研究が展開されることとしていた。当初の2年間の研究計画が、大きく遅れていることから、研究計画の変更として、社会的課題解決と営利の追求を同時に実現するビジネスを展開する企業活動に関して、海外の論文を中心とした先行研究と WEBによる検索を行うことで、実際の企業と非営利組織へのヒアリングを代替すると共に、可能な範囲でこれらを対象とした国内の国際援助期間などへのインタビュー調査を進めている。またソーシャル・ビジネスに関するWEBセミナーの参加を通じて、知見を得ることを意図している。 さらに今回の研究プロジェクトで対象とした開発途上国市場への参入事例だけではなく、コロナ禍で新たに構想され展開されている社会的な課題を解決するビジネスに関しても、研究対象に含めることを検討している。 これらの研究計画変更を含めた進捗状況を見据えながら、最終年度の研究を進めていく。既に執筆中の論文の公刊(単著および共著論文)なども予定されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコロナ禍にあって、研究計画の中核であった開発途上国に参入した企業およびそれらの企業と連携をしながら、現地の社会的な課題の解決に貢献する事業としてのソーシャル・ビジネスについて、まったくリサーチすることができなかった。特に国内外の出張費として想定した金額を少しも支出しなかったことが、次年度使用額が、前年度に比べて大幅な増額になっている理由として挙げられる。 次年度については、海外出張と入国の制約が緩和されることを前提として、研究計画の遅れを取り戻すべく、可能な限り国内外のインタビューを積極的に進めていく予定である。
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