研究課題/領域番号 |
19K01890
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松田 千恵子 首都大学東京, 経営学研究科, 教授 (80613140)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 親子上場 / 非上場化 / コーポレートガバナンス / 企業経営 / 財務戦略 |
研究実績の概要 |
本研究は、株式市場における「親子上場」解消による非上場化の増加に焦点をあて、「親子上場解消の決定要因とその影響」を明らかにすることを目的としている。 今年度は、本科研費による研究期間の初年度ということもあり、研究のプラットフォームとなる親子上場データベースの構築に注力した。幸い、M&Aに関する商用データベースを有する株式会社レコフデータの協力が得られ、研究に用いる親子上場データベースを無事完成させることができた。また、初期的な検討結果に関する論文を査読付き論文として、現在指導中の博士課程学生と共同で完成させることができた。加えて、親子上場を含む非上場化や企業の事業ポートフォリオマネジメントなど関連する幅広いテーマに関して学会発表や執筆活動などを行った。具体的な成果としては、単著を2冊上梓、国際学会での発表や招待講演などを含む学会発表を計7件(1件はコロナ禍によりリアル会議中止)を行ったほか、国際学会での論文発表、その他学術誌・一般紙への寄稿などを精力的に実施した。 親子上場に関しては、政府における未来投資会議、および経済産業省グループ・ガバナンス・システム研究会においてこの問題が大きく取り上げられたことから、自身のこれまでの研究内容を同研究会に提供した。これを契機に2019年6月に公表された「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の策定にも裏方ながら携わり、研究成果の発表および社会還元を果たすとともに、これからの研究に関しての知見を深めた。 また、今年度は自身が社外役員を務める複数の企業において、実際に親子上場に端を発する経営課題が明らかになり、本研究の意義を裏付ける結果となったほか、自分自身が当事者として企業の意思決定に参加できるという貴重な機会を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であった親子上場解消データベースについては無事関せさせることができ、今後の研究に大いに役立ていることができる。また、初年度に査読論文や単著2冊も完成でき、学会活動や執筆活動も精力的に行うことができた。加えて上述の通り政府関連の動きや自身の社外役員としての立場などから、想定以上に貴重なインプットを多く得ることができ、今後の研究に生かすことができると思料される。そういう意味では、当初の計画を上回り順調に推移しているが、一方で先行研究のサーベイについては、順調には推移しているものの、次年度への積み残しが若干あり、この点を考慮して上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、積み残しである先行研究のサーベイを早期に終了させることとしたい。そのうえで、定量研究を本格化させ、親子上場解消後のグループ経営の姿を分析する。具体的には、親子上場解消がもたらす企業価値向上の有無をイベントスタディなどの手法により検証する。また、親子上場解消前と後の業績の変化についてパフォーマンススタディなどを用いて明らかにする。親子上場解消後に組織改革やリストラクチャリング、グループガバナンス面での変化等が起きている場合、その影響についても分析を行う。 このような親子上場解消後の変化については、定量分析だけでは網羅できない部分が出てくる可能性もあるため、定性分析の可能背に関しても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度においては、データ購入費用の一部を企業との共同研究協力ということで減免して頂いたことから、使用金額を少なく抑えることができた。一方、本研究に必須のデータについては継続して課金が発生し、その値上げが決まっていることから、データ購入費用は次年度にはかなりの額が発生する予定である。また、定性研究を検討するにあたって、アンケート或いはインタビューにかかる費用が相当程度見込まれる。従って、次年度はそれらに充当が必要である。
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