研究課題/領域番号 |
19K01892
|
研究機関 | 富士大学 |
研究代表者 |
堀 圭介 富士大学, 経済・経営システム研究科, 准教授 (80438514)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 熟練 / 徒弟制度 / 酒造業 / 技術普及 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、戦前から現在までの酒造労働における熟練形成のプロセスと熟練形成に寄与する要因を分析し、その歴史的な変容過程と展望を明らかにすることにある。より具体的には、南部杜氏協会会員への聞き取り調査および南部杜氏協会会員名簿や全国新酒鑑評会入賞記録を基に、熟練形成に影響を及ぼす要因の特定を中心として調査研究を実施するものである。 令和二年度は大きく次の3つの点に注力し研究を進めてきた。第1点は前年度から継続して行ってきた、徒弟制度下と通常の社員教育下での熟練形成の比較研究である。1960年から2015年までの杜氏協会の名簿や鑑評会受賞記録などの情報などを基に、徒弟制度下での教育よりも通常の社員教育による方法が熟練形成に効果があることを明らかにした。また、1980年代以前の酒造メーカーにとって競争の焦点は低コスト低価格での製品展開にあったが、それ以降は競争の軸を価格から品質にシフトさせたこと、さらには季節雇用の従業員数の減少・賃金上昇によってフルタイム雇用の従業員を雇用し高品質の清酒を製造できるように訓練を施していったことを併せて明らかにした。これらの分析結果については査読付論文として発表した。第2に酒造技術の普及過程の実態調査研究である。特に東北地方に焦点を当て、大正期以降の技術講習や教育がどのような主体によって展開され技術普及が可能になったのか、その実態を各種資料から明らかにした。第3は酒造労働従事者の出稼ぎに関するデータの収集とその入力である。杜氏協会名簿に基づき、杜氏以外の酒造労働従事者の勤務先や属性に関するデータを収集した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
査読付ジャーナルへの掲載は可能になったものの、前年度実施する予定であった国際会議での発表が行えなかった。また、大正期以降の技術の標準化と熟練の相互作用に関する実態調査を実施できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、計画通り杜氏名簿を基にした分析を進めるとともに、本研究プロジェクトに関る学会発表、および論文投稿を継続して行う。また大正期から昭和期にかけての酒造技術の普及・標準化と熟練との相互作用に関る実態調査を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対策に関連して学会発表および東北地方での実地調査を延期する必要があったため、次年度以降に旅費および資料・書籍費およびデータ入力作業用備品費として使用する。
|