研究課題/領域番号 |
19K01897
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
内藤 陽子 東海大学, 経営学部 経営学科, 准教授 (80710912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 知識移転と組織適応の促進 / 個人内の認知的資源の獲得バトル / コンフリクト / 社会的コア動機 / 海外経験者の活用とその上司へのサポート |
研究実績の概要 |
企業における海外派遣後の帰任者に関する研究を従業員移動領域に位置付け、かつ、組織成果を向上させるマネジメント方法の導出を目的とした研究プロジェクトを2022年度に再構成し、7つの研究に分けた。本年度はそのうち以下の3つに注力した(括弧内は昨年度に付けた番号である)。第一に、理論的枠組みを構築した「帰任者の知識移転と組織適応の両立に関する研究」(①)について、理論研究の国際雑誌への投稿と国内の学会での発表を行った。投稿はリジェクトであったが、そこでいただいたレビューペーパーを基に改訂方針を立てた。①の関連研究では、知識移転を担う帰任者は、一般に帰国後の新組織への適応も担うが、先行研究では両者が両立すると仮定するにとどまり、その関係が解明されていない。各々の既存モデルを単に合わせるだけでは、それを実行する個人の中で認知的な葛藤・バトルが生じるといったコンフリクトを見過ごしてしまう。そのため、この解明は国際的な知識を保有する従業員のマネジメントにおいて、重要なテーマであると考えている。第二に、「海外経験者の上司を対象にした組織マネジメントに関する研究」(⑥)は、「海外経験者の活用に向けた上司への組織サポート研究」として、上司へのサポートに関する先行研究のレビューを行い、2024年9月に出版される大学の紀要に掲載するよう進めた。これは、外国人従業員や海外派遣者といった海外経験者をマネジメントする上司を対象にした調査データを基にしている。ここでの知見から、この上司に提供すべき組織からの効果的なサポートについて、有用な手掛かりを得ることができるであろう。第三に、「知識の移転者である帰任者の知識移転モチベーション研究」(③)は、将来の実証研究のために移転モチベーションの促進要因を特定した理論研究である。本年度は国内の学会で発表し、それを踏まえて再考し強固な枠組みを提示できるよう進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
投稿や学会発表を行ったことで、研究内容やその進め方について改善点などが見つかり、計画を立て直したことが主な理由の一つであります。
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今後の研究の推進方策 |
上記7つのうち1つは終了したので、残りの6つの研究を以下の順に進めるよう計画している。第一に、「帰任者の知識移転と組織適応の両立に関する研究」(①)は、帰任者が両方を両立させる上で、自身の認知的な資源の配分に葛藤が生じうることを指摘し、それを乗り越えるために「マルチタスク」「ワーキングメモリ」「信頼」に関する観点を研究に導入することで、組織適応する個人による知識移転の遂行を進める方法を明らかにし、説明力の高い枠組みを構築する方向で進めるよう計画している。第二に、「知識の移転者である帰任者の知識移転モチベーション研究」(③)は、将来的に実証研究を行いやすくするために、移転モチベーションの促進要因を特定したフレームワークの構築を進める。第三に、「従業員移動を通じた知識移転フローの円滑化の研究」(②)は、「サイバネティクス」を応用した5段階プロセスと、知識フロー上のバリアを明示し、組織の論理と個人の論理に注意を払いつつ、構成を考え方向性を定めていく。第四に、④の研究に⑥で扱った「上司の立場から見た海外経験者が保有する知識の活用」を取り込み「従業員移動における帰任の問題と特徴、知識の活用に関する研究」(④)として進める。この研究では、帰任者が保有する知識の価値、帰任者の移転者としての適性、移動目的と知識移転の困難さとの関係を明らかにし、帰任者だけではなく上司からの視点も取り込み、帰任者活用に向けた提案を行うよう進める。第五に、「就業能力と組織社会化に関する研究」(⑤)は、日本企業において主に若年層の就業初期に求められる一般的就業能力の類型化を進める。第六に、「帰任に関するレビュー研究」(⑦)は、以上を出版した後に着手できるよう準備する。以上について、引き続き構成と文章化に取りかかり、2024年度以降順次完成させていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に研究計画を変更し、研究を7つの領域に分けて遂行することとしました。これまでに生じた余剰額は、今後行う6つの研究に要する費用に充当させていただく予定です。
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