研究課題/領域番号 |
19K01899
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
長島 直樹 東洋大学, 経営学部, 教授 (10732779)
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研究分担者 |
長島 芳枝 大東文化大学, 経営学部, 教授 (10572026) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海外進出 / 新興国 / サービス / 経験知 / 顧客満足 |
研究実績の概要 |
新規のヒアリング調査ができなかったため、既存のデータ(アンケート調査結果)を用いた計量分析を実施した。海外進出に際して重視されるマーケティング関連の知識は経験知とされ、事前調査は困難とみなされてきた背景がある。しかし、中でも重要とされる「現地消費者の顧客満足がどのような要因で規定されているのか」に関し、(進出後ではなく)事前にどの程度把握できるか――実証分析を行った。具体的には、日本・インド・ベトナムの3カ国で共通のモデルに即して分析し、比較検討した。この結果、日本と他の2カ国(新興国)という対比以上に、新興国間(インド・ベトナム間)に大きな違いが発見され、先進国対新興国という図式が成立しないことなどが確認された。 その他のファインディングは以下の通りである。①CSに影響を与える観測変数群は「(a)体験全体としての良さ」「(b)価格コストに対する納得感」「(c)事前予想と比較した際の良さもしくは“ずれ”」の3因子に集約することが可能と推測される、②上記(a)~(c)3グループ(3因子)は3国ともCSへの影響という意味において、(a)のインパクトが最も大きいことが共通している。標準化係数で比較しても大きな違いはない。一方、(b), (c)に関しては、3国間に比較的明確な違いが観察される、③ (b)の知覚価格コストのCSへの影響は、インドで最大で、日本で最少となる。また、(c)の事前予想の影響は、日本とベトナムで(a)体験全体評価の半分程度の影響が確認される一方、インドでは有意にマイナスである。 以上のような分析結果を踏まえ、インプリケーションを考察した。この結果を論文(コンファレンス・ペーパー)にまとめ、Association for Japan Business Studies (AJBS) の大会で学会報告を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モデル分析は進めているものの、海外進出に関する企業ヒアリングができていないため、研究進捗は当初予定よりも少し遅れている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、企業ヒアリングが進まなかった面もあるが、それよりも大きな理由は2021年度に私が学科長となり、学務(主に新入生オリエンテーション、人事採用、入試イベント、長時間にわたる定期的なミーティング等々)に忙殺されたことによる。しかし、2022年度はサバティカル(国内研究)を獲得することができたため、鋭意研究を推進したい。
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今後の研究の推進方策 |
当面は、新型コロナウイルスの感染状況が楽観できない状況が続くため、企業ヒアリングは再考せざるを得ないと思われる(電話やメールによるアポイントメントを試みても、なかなか応じて頂けない状況が続いている)。このため、既存のデータによるモデル分析の深化を研究目的として、方向を修正したい。2022年度の研究項目は、①顧客満足の次元性と単一指標による顧客満足把握の可能性の検討(3カ国の分析による)、②切断効果の検討(同、QCAを予定)、③目的別のCS構造の違い、④CSがロイヤルティを規定する程度(ロイヤルティは「再利用意図」「愛着」「推奨意図」に3分類する)の4項目を実施する予定である。既存のデータが2015年とやや古くなっているため、新規の調査(新型コロナ感染の影響を受けないWeb調査による)を実施することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業ヒアリングがほとんど進まなかった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、企業の担当者(海外部門長あるいは担当役員)に応じてもらえなかったこと、私が学科長になってしまったため、学務に忙殺されたこと――の2点が理由である。2022年度は学科長ではなくなるものの、新型コロナウイルス感染に関しては、まだ楽観できない状況である。オンラインヒアリングの可能性はあるが、実際には応じてもらえる企業は多くない(10件依頼して、1件承諾してもらえるかどうかという状況)。このため、これまでに実施できた数件の企業ヒアリングは調査事例という位置づけとし、統計分析対象のサンプルとはしないこととしたい。これに代わって、新たなWeb調査を企画し、日本・インド・ベトナムの3カ国において実施したい。2022年度は計画の最終年度に当たるため、データ分析を進めつつ新規のWeb調査を企画し、10月頃までには実施する予定である。
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