研究課題/領域番号 |
19K01902
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
小菅 竜介 立命館大学, 経営管理研究科, 准教授 (80755471)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顧客経験 / CDロジック / 複線径路等至性アプローチ / 意思決定権限の配分 |
研究実績の概要 |
本研究は、モノ中心でなくサービス中心の見方をするSDロジック(サービス・ドミナント・ロジック)にもとづいて、営業担当者の「価値共創志向」を概念化し、実証的検討を行うものである。 初年度である2019年度は、主に理論的検討を中心に研究を進めた。文献レビューにおいては、SDロジックを扱う文献を抽出し、精査した。その結果、研究の基本的視座として、SDロジックとともに、CDロジック(カスタマー・ドミナント・ロジック)に注目すべきことが明らかになった。端的に、CDロジックは顧客の世界あるいは顧客エコシステムに注目するものであり、プロバイダー視点が強いSDロジックを補完するものである。 また、文化心理学にもとづくTEA(複線径路等至性アプローチ)と出会うことで、CDロジックを具体的にとらえるための方法論を獲得した。これは時間を捨象せずに個人の人生文脈の中における経験を可視化・考察しようとうするものであり、顧客経験に関する研究に重要な貢献をもたらしうる。実際、自動車ディーラーで高いパフォーマンスを上げる営業担当者へのインタビューからは、TEA的なアプローチで顧客と対話を行うことの有効性が示唆された。 プロバイダー側については、ケーススタディにより、営業拠点と本社の間における意思決定権限の配分がいかに顧客経験創出のあり方に影響を与えるかを明らかにした。この成果は英語論文として発表している。 以上より、当初仮定していた「価値共創志向」という概念の精緻化が進んだことで、今後の研究へ向けた土台が整備されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本格的な実証的検討の段階には至っていないものの、理論面において期待以上の発展があったため。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度における研究成果にもとづいて、顧客の人生の径路をとらえるという側面に焦点を当てながら、引き続き定性的・定量的アプローチにより研究を推進していく。 2020年度は所属機関での在外研究期間にあたる。当初は滞在先および(一時帰国に際して)日本国内で調査を行う計画を立てていた。しかし、新型コロナウィルスの収束が見えず、計画通りに調査を行うことは困難な状況にある。そこで、オンラインでのインタビューやサーベイ等、新しい調査手段を検討したい。また、調査可能性の観点から、当面は営業側というよりも顧客(消費者)側に焦点を当てることも考えている。なお、このような不規則な状況を鑑みて、研究期間を1年延長する可能性もある。 中間研究成果の発表については、2020年10月に開催されるマーケティング学会での口頭発表を計画している。また、2020年度内に査読付き雑誌への投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費使用額が少なかったのは、理論研究に注力することになり、フィールドワークを行う頻度が当初の計画よりも少なかったからである。また、これに伴い、フィールドワークのために必要な機器等の購入も抑制する結果となった。 次年度(2020年度)使用額は、主にWebサーベイの実施のために充当する計画である。新型コロナウィルスの状況次第では、フィールドワークのための旅費に充当することも検討する。
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