本研究の目的は、サービス組織において構成員の倫理的行動を促進するためのマネジメント・モデルを明らかにすることである。この目的のため、①サービス組織の倫理的または非倫理的行動の実態を解明すること、②倫理的行動に寄与する職務態度・能力を特定すること、③これらの能力獲得を促進する組織的な要因を実証的に特定すること、の3つを具体的な研究課題として設定した。 最終年度では、②と③の課題に取り組むために、民間企業の雇用者を対象としたオンライン調査、高齢者施設の雇用者を対象としたオンライン調査、高齢者施設の施設長と雇用者を対象としたインタビュー調査の3つを実施した。分析の結果、仕事と私生活のポジティブな関係を経験している従業員ほど、職務での倫理的な効力感や配慮意識が高いこと、職務での感情的な消耗度合いがこの関係に影響を与えることを示した。また、サービス組織においては顧客との関係性が不適切行為に影響を与えること、サービス業務に対する熟練や顧客対応知識がこの関係に影響を与えることを明らかにし、こうした専門能力を獲得する機会の向上が必要であることを示唆した。 これらの結果を解釈するための理論的枠組みについては、行動倫理研究における理性的アプローチと直観的・感情的アプローチの知見を踏まえたレビュー論文を公表した。サービス組織における倫理的行動の実態については国際学会で発表を行った。最終年度は、モラル・マネジメントと人的資源管理のあり方について『人的資源管理の考え方』(柴田、2024)でまとめた。
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