研究代表者らが報告した、ファミリービジネス子女でありながら継承者から漏れている「承継外子女」の起業家活動への注目は皆無といってよい。国策として 経営的・資金的な支援もほぼない上、研究も十分ではないといえる。そこで我々は承継外子女の特徴を探索することとした。 本研究の目的は、これまで不明であった承継外女子の起業家の特徴と成功要因を明らかにすることである。起業家の育成は喫緊の課題で様々な取り組みが熱心に行われているが、日本の新規開業率は米国比1/3以下と極めて低水準に止まる。いっぽうで起業家の親が経営者であったという調査もあり、承継外子女の起業ポテンシャルが伺える。 2020年度までにインタビューデータの分析を実施した。結果、承継外子女起業家の起業家活動の特徴として次の3つを見出した。1) キャリア選択に対し、非常に自律的な起業家的態度 2) エフェクチュエーションを用いてビジネスモデルを構築しながら起業する 3) ファミリービジネスをロールモデルと考え、それを乗り越えようとする意欲が高い。 さらに、「承継外子女起業家の起業プロセスやビジネスモデルに、ファミリーアントレプレナーシップはいかなる影響を及ぼしているか」を問いに設定し、分析した。結果、承継外子女は社会貢献を当初より強く意識し、ビジネス上のリスク性向が低いことが分かった。さらに地域に根差した事業ファミリーとしてのファミリーアントレプレナーシップが影響していることが示唆された。加えて「承継外子女はファミリービジネスから何を受け継ぎ、何を加味して事業創造しているか」という問いを設定し分析を進めている。
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