研究課題/領域番号 |
19K01912
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
須藤 美音 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20581812)
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研究分担者 |
松田 早里 (保科早里) 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80646612)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 看護師 / 生産性 / 心的ストレス / リフレッシュ / 自律神経バランス / フィールド調査 |
研究実績の概要 |
【研究の具体的内容】2019年度は、病棟看護師を対象に業務中の休息(リフレッシュ)による肉体的・精神的疲労への影響を明らかにすることを目的として実測調査を行った。調査の対象は、名古屋市立大学病院の2病棟をの日勤看護師(約10名/日)とした。 看護師にリフレッシュルーム等における強制的な休息時間を設け、休息による疲労度の変化について生理的、心理的評価を行った。生理的評価としては、自律神経機能バランス(LF/HF)を日勤帯の終了時に計測を行った。心理的評価としては、自覚症しらべを用いた。疲労の経時的変化を捉えるため、1日3回実施した。これに加えて、実測期間中の最終勤務日に、休息による作業の集中度やリラックス度の変化、また、リフレッシュルームやリフレッシュ方法に対する意見をアンケート調査およびインタビューにより収集した。調査は、2019年1月に休息導入前の状況を測定し、その後、休息を導入した効果を1ヵ月後、3ヵ月後、6ヵ月後、12ヵ月後に実施した。 さらに、休息実施による波及的効果として、スタッフ間のコミュニケーションの活性化が期待される。2020年1月の調査(12ヵ月後)ストップモーションカメラを用いて会話の時間、回数、発生場所を記録した。 【研究の意義、重要性】休息を導入することにおける、短期的な効果はこれまで多くの研究で報告されてきたが、重要なことは継続的に行うことであると考えている。本研究では1年間実施することによる疲労感への効果を生理的、心理的な手法で総合的に評価したことに新規性がある。さらに、継続することによる課題、業務の違いのよる課題も明らかにしており、現場での実現可能性も考察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【当初の予定】2019年度は休息(リフレッシュ)できる環境の構築による、精神的・身体的ストレスや知的活動に与える影響を明らかにすることを目的として、下記、①~③の調査を予定していた。 ①休憩の実施状況の把握【フィールド調査】:現状の休息の実施状況を把握し、自律神経バランや心理的な疲労感を評価する。2019年1月に名市大病院(2病棟;被験者看護師約40名)にてフィールド調査を実施。 ②休憩実施による効果:2019年2月より同病院にて午前・午後に各1回(5分程度)強制的に休憩を実施する。1カ月後、6か月後に実施。 ③短時間の休憩が階層別の知的活動に及ぼす影響【実験室実験】:名古屋工業大学 環境実験室における被験者実験(被験者男女各5名)により、身体的負荷の違いが知的階層別の知的活動に与える影響を評価し、短時間の休憩の効果を定量的に示す。 【進捗状況】①、②は予定通り実施した。2022年度実施予定であった「医療スタッフ間のコミュニケーション」に関する調査を②実施時に同時に行うことが可能となったため、当初行う予定であった③の実施を見送った。これは、2022年度に実施する予定であるため、おおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【実施計画】2020年度は、スタッフステーション内での知的活動に集中できる環境が精神的・身体的ストレスや知的活動に与える影響を明らかにすることを目的として調査を行う。調査概要は下記、①~③に示す。 ①ナースコール音等による精神的ストレスの評価:名市大病院を対象にスタッフステーション内のストレス要因の1つであるナースコール等の発生状況とそれにより受ける看護師の精神的ストレスの調査を行う。被験者は18病棟の看護師約200名とする。測定項目としては、ナースコール等の発生頻度とそれによるストレス・集中度への影響を生理的、心理的に評価を行う。 ②コンセントレーションルームの設置による効果:スタッフステーション内にコンセントレーションルームを設置し、短時間ナースコール等の対応から離れ(5~10分程度)、集中して執務できる空間・体制を構築する。設置から1カ月後、6か月後、12カ月後と継続的に測定を行う。 【遂行する上での課題】2020年8月より実測調査を行う予定で準備を進めているが、コロナウイルスの影響で、病院での実測調査が不可能となった場合は以下の研究を進める。まず、大学内での研究が実施可能となった場合は、2019年度実施ができなかった、「実験室実験による休息の効果の検証」を行う。実験室実験も実施不可能な場合、2020年1月の実測調査で取得したモニタリングカメラによる映像データを用いて、現状の集中力継続時間の評価を試みる。
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