研究課題/領域番号 |
19K01913
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
陳 韻如 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (00389404)
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研究分担者 |
朴 唯新 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (20435457)
中岡 伊織 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 准教授 (50469186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グローバルバリューネットワーク / IoT / 経営パラダイム / テキスト分析 / 日本ICT企業 / パナソニック |
研究実績の概要 |
本研究の目的は東アジアICT企業のIoT分野の主導権争いをめぐるグローバルバリューネットワーク(以下、GVN)の実態と構築のダイナミズムをテキスト分析と社会ネットワーク分析によって明らかにすることである。2019年度の計画として、(1)理論レビューや分析手法の開発、(2)日本企業(パナソニック・ソニー)の特許・取引先・資本関係の情報のデータベース化、(3)日本企業と台湾企業の聞き取り調査が挙げられた。昨年度は(1)と(2)を中心に研究を進めていた。 成果は以下の通りである。まず、陳(2020)はパナソニックのGVNの変化が同社の20年間を及んだ経営改革と連動すると考え、テキスト分析によって同社の経営パラダイムは内部の強み構築のプラットフォームからオープンイノベーションを受け入れるプラットフォームにシフトしたことや問題点等を明らかにした。改革は同社のGVNへの影響として、2000年代初期のGVNの簡素化と内部化、2000年以降のGVNのオープン化と事業基盤の不安定などをもたらしたと推測した。そして、陳・井村・小山(2019)は2019年2月にフィンランドオウルで実地調査を行った結果を基に、地域性GVNの生成という切り口から考察し報告した。具体的に、オウルの支援機関、スタートアップ企業、日本企業といったアクターの活動や動機、アクター間の関係などの考察を通じてノキア・ショック後のオウルは次世代IoTに向けて急速にGVNを立ち上げた要因を浮き彫りにした。そのほか、特許ネットワークを析出する研究方法は共同研究のメンバーによって確立され、その研究手法を製薬業界(Nakaoka et al.、2019)、自動車産業(赤岡・中岡・朴、2019)の分析等に応用された。また、中国ICT企業(アリババ、ファーウェイ、テンセント)が次世代IoTのGVNを構築するプロセスやポジショニングも把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コントロールできない要因により、昨年度は計画通りに研究を執行することができなかったためである。まず、日本企業の特許・取引先・資本関係のデータベース構築において、これまで調査会社アイアールシー(IRC)が発行した取引・資本関係のデータを基にデータベース作り、分析を行ってきたが、同社は所在不明になり、データの入手がきわめて困難になった。そして、日本企業と台湾企業への聞き取り調査も新型コロナウィルス感染症の影響により実行することができず年度内に調査を再開するめども立たなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後研究課題を進めるにあたって、代替的なデータや現地訪問が困難な場合の代案で対応することを考えている。取引関係のネットワーク分析に関しては、新型コロナウィルス感染症がもたらしたグローバルサプライチェーンへの影響を逆手にとって、新聞記事のテキスト分析によってグローバルサプライチェーンが断絶となった前の状況を還元する。そして、現地訪問が困難な場合は、本社に対するオンラインミーティングや質問票調査などで補う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、感染症の流行やデータの発行元の倒産といった予想不能な出来事によると言わざるを得ない。前者においては、現地調査をすべて取りやめになったため、旅費の執行はなかった。後者では、データベースの構築に必要なデータが一部欠けていたことにより、データ入力で計上した研究補助者への謝金の支出も減った。 次年度への繰越金額は研究を計画通りに進めるように、代替的なデータベースの利用や、データ分析のための高性能パソコンの購入、データ探索に必要な研究補助者の増員、現地調査(またはアンケート調査)などに使用する予定である。
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