研究課題/領域番号 |
19K01913
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
陳 韻如 滋賀大学, 経済学部, 教授 (00389404)
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研究分担者 |
朴 唯新 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (20435457)
中岡 伊織 星城大学, 経営学部, 准教授 (50469186)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | グローバルバリューネットワーク / 研究開発ネットワーク / 東アジア / 電気自動車 |
研究実績の概要 |
2021年度は大きな研究制限のなか申請時の研究計画を修正し、(1)グローバルバリューネットワーク(以下、GVN)の再定義、コロナウィルス感染症によるGVNの混乱の現状の把握、(2)特定の産業に焦点を当て、主要企業の研究開発ネットワークの分析と戦略などを中心に研究を進めていた。 研究成果は以下の通りである。Park, Nakaoka, Chen (2022)はIoT技術と親和性の高い電気自動車(以下、EV)のGVNに焦点を当て、世界主要自動車メーカーと重要部品のバッテリーメーカーの戦略と研究開発ネットワークとの関係性を明らかにした。自動車メーカーとバッテリーメーカーの事例として、前者にToyota, Tesla, Volkswagen、後者にPanasonic, CATL, LG Chemを取り上げた。特許分析と社会ネットワーク分析の結果から、世界は日本、中国、韓国のバッテリーメーカーを中心に3つのネットワークを形成されていると示した。Teslaは戦略として低コスト(LFP)と高品質(NCM)を両立するポジショニングにあるのに対し、Toyotaは高品質志向でありPanasonicと提携し、VolkswagenはLG Chemとの提携によりTeslaと近いポジショニング戦略をとっている。 そのほか、陳・井村・中岡(2021)は中国企業を国有企業と民営企業という所有形態別に分け、テキスト分析によりコーポレート・ガバナンス面から中国企業の資本戦略の傾向と多様性、変化のダイナミクスを浮き彫りにした。井村・中岡・陳(2021)はテキスト分析によりアメリカ主要産業の自動車産業とIT産業の経営システムの変化を析出し比較を行った結果、それぞれの産業の地域性により経営システムが異なるという結果を得た。今後、GVNの構築は地理や国・地域の経営システム等との関係性を探る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は2020年度と同様、感染症の拡大と移動制限により研究は計画通りに進めることができなかった。日本企業や海外企業への聞き取り調査を行えなかっただけでなく、調査対象の資料収集やデータベースの構築も難航している。予想外の世界サプライチェーンの断絶や混乱により、従来構築されていたサプライチェーンを前提とする研究が難しくなり、研究対象や研究方法の見直しは時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き研究の遅れを解消することを最優先な課題にする。特に、データの入手方法や研究方法、研究対象の変更などで最終年度の研究を進めていく。資本関係・取引関係のネットワーク分析に関しては、使用できるデータの探索を予定している。そして、現地調査の再開が見込めないなか、オンライン調査へ研究方法を変更し、また新しいデータ分析の可能性を模索する。そのほか、台湾はコロナ禍で半導体産業での重要性が高まっているため、台湾半導体のグローバルバリューネットワークの優位性を研究対象に加えることや、感染症や戦争などがもたらしたGVNの変化を追跡することを新しい研究の方向性として検討する。ただし、必要に応じて柔軟に調整していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初研究計画で予定していた現地調査が実行できず、また分析に必要なデータを収集できなかったのは次年度使用額が生じた主な理由である。現地調査について、感染症の流行拡大により移動の制限が厳しいため、海外調査だけでなく国内の調査もほとんど実行することができなかった。データ収集については、感染症や世界のサプライチェーンの混乱により、従来想定していたGVNも大きく様子が変わり、データの収集はさらに困難になっただけでなく、従来のGVNの研究意義も考えなければならないことになった。次年度への繰越金額はデータベースの購入や、オンラインワークショップの開催などに使用する予定である。
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