研究課題/領域番号 |
19K01915
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大坪 稔 九州大学, 経済学研究院, 教授 (90325556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ジョイントベンチャー / 共同出資会社 / 資本提携 / リストラクチャリング |
研究実績の概要 |
本年度は、ジョイントベンチャー(共同出資会社)に焦点を当てた研究を実施した。ジョイントベンチャーは、複数の企業が共同で新会社を設立する方法であり、エクイティアライアンスの一形態である。ジョイントベンチャーを活用する企業では、他企業による出資がある点で、企業グループの資本関係をより複雑にする。この研究では、ジョイントベンチャーの設立が、設立企業の株主価値増大に寄与するのか否か、さらにジョイントベンチャーの設立には複数の企業が関与することから、企業間で株主価値の増大(あるいは減少)に違いがみられるのか、違いがあるのであれば、なぜなのか、について実証的に分析を行った。 分析の結果、一方の企業では株主価値が増大するのに対し、もう一方の企業では増大しない、あるいは減少すること、が明らかとなった。そして、このような非対称的な株主価値の変化が設立企業による私的便益の追求から生じることについて、明らかにした。具体的には、ジョイントベンチャーの設立に際し、出資比率が低いほど、出資企業の収益性に差があるほど、出資企業間の株主価値に差が生じること、さらには低収益であった企業ほどジョイントベンチャー設立後は業績の改善がみられることから、低収益企業がジョイントベンチャーを通じて高収益な相手企業から富を収奪し、その結果として、両企業間で株主価値の変化に違いがみられることが明らかとなった。この結果は、設立企業の経営状態、すなわち収益性がジョイントベンチャー設立時の株主価値の変化に多大な影響を及ぼしていることを明らかにした点において重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来であれば、ジョイントベンチャーの設立の研究に着手する一方で、日本企業の長期間の企業グループ関係の変化の研究に着手すべきところであるが、データの入手・整理に着手したのみであり、成果を出すに至ってはいないため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、日本企業の長期間にわたる企業グループの資本関係のデータ入手及び整理を開始しており、2020年度はこれらのデータをもとに、過去20年間の日本企業の資本関係の変化の変遷について実証的に分析を行う予定である。
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