研究課題/領域番号 |
19K01918
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
村上 恵子 県立広島大学, 経営情報学部, 教授 (90325142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 企業年金制度 |
研究実績の概要 |
研究2年目における研究到達目標は、1年目に構築したデータを用いて企業年金制度の「選択と移行」が企業価値などに与える影響を分析することであった。 1年目のデータ入力が遅れていたため、本年度はデータベースの構築を継続するとともに、まずは予備分析として2015~2017年度の企業財務データを用いて上場企業と非上場企業の退職給付制度の採用と制度の変更に影響する要因を確認した。その結果、企業規模が大きいほど確定給付型退職給付制度や確定拠出型退職給付制度を採用する傾向があること、企業規模が小さいと退職一時金制度のみを採用する傾向が見られること、上場しているかどうかは確定拠出型退職給付制度の採用と退職一時金制度のみの採用に影響を与えていることを明らかにした。さらに、規模の大きい企業は1つ以上の年金制度を採用し、規模の小さい非上場企業は退職一時金のみを採用する傾向があること、制度変更において積立不足率が高まった規模の大きい企業は年金制度を変更し、積立不足率が高まった企業規模の小さい非上場企業は退職一時金制度を変更するという結果につながったことも確認した。以上の結果から、結論として、(1)新たな会計基準の導入・公表によって退職給付に関する債務や年金資産の開示が求められるようになったことが、上場企業の確定拠出年金の採用に拍車をかけた可能性があること、(2)我が国の退職給付制度の採用において企業の二極化が進んでおり、企業規模や積立不足率といった非常に分かりやすい指標が各種退職給付制度の採用に影響を与えている可能性があることを指摘した。 研究の途中報告としては、以上の分析結果を論文で発表した(『県立広島大学経営情報学部論集』第13号、2020年12月1日発行)。これにより、今後の研究の展開に備えた整理を行えたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度中にデータセットを完成させ、企業年金制度の選択と移行が企業価値などに与える影響を分析する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けたオンライン授業対応等により研究に充てることのできる時間が減少し、今年度の研究成果が1年目から継続しているデータ入力と予備的分析(退職給付制度の採用と制度の変更に影響する要因)の発表に留まってしまった。このため、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに構築したデータセットを用いて、当初、2年目に行う予定にしていた(1)企業が年金制度を移行させたときの企業価値と外部格付の変化の観察、(2)導入している企業年金制度が企業価値と外部格付に与える影響の分析と、3年目に予定していた(1)確定給付型年金導入企業の年金積立不足や積立比率が企業価値と外部格付に与える影響の分析、(2)年金の積立不足や積立比率が確定給付型企業年金導入企業の企業価値と外部格付に与える影響は企業規模や業種など企業の特性によって異なるのかに関する分析を行い、その結果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)新型コロナウイルス感染拡大を受けて学会がすべてオンライン開催となり、出張を伴う打ち合わせもオンラインで実施したため旅費の支出がなくなったこと、(2)オンライン授業の実施により学生アルバイトを雇用することができず、人件費の支出がなくなったこと、(3)研究時間の減少による分析の遅れにより、最新データの購入を次年度に変更したことで物品費の支出が減額したこと、以上の3つの理由から次年度使用額が生じた。これらは主に2021年度に購入する分析用データの購入費で使用する計画である。
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