研究実績の概要 |
研究4年目は、日経NEEDS(退職給付関連データ)の財務データを用いて上場企業2,832社の退職給付制度の導入状況と確定給付型の企業年金を導入している場合の積立不足に地域差があるのかを分析した。分析の結果、上場企業を分析対象としたこともあり、充実した退職給制度を提供している企業が多く、退職給付制度の導入状況に地域差を確認することはできなかった。確定給付型の企業年金導入企業の積立不足に地域差があるかを検証した結果においても、一部地域間に格差が見られたものの、多くの地域で地域差は確認できなかった。また、企業の時価総額と退職給付制度が確定拠出型の年金制度のみの企業の割合を地域別に確認したが、両者に関係があるとは言い難いことも確認した。 研究期間全体を通じて、上場企業の企業年金制度の導入状況に地域差は観察できないが、上場企業においても企業年金制度の導入状況に差があることを明らかにした。また、非上場企業を含む分析においては、上場しているかどうかは確定拠出型退職給付制度の採用と退職一時金制度のみの採用に影響を与えていること、規模の大きい企業は1つ以上の年金制度を採用し、規模の小さい非上場企業は退職一時金のみを採用する傾向があること等を明らかにした。退職給付制度の導入状況と時価総額の強い関係は確認できなかったが、確定拠出型の企業年金制度しか持たない企業では従業員が選択する金融商品によって退職後の年金受給額が想定よりもかなり少なくなってしまう可能性があるため、従業員が運用商品を選択する際の支援や、運用商品を選択しない加入者への支援をより強化する必要があることを指摘した。 研究4年目の成果は、以下の論文で発表した(村上恵子・西田小百合「企業の退職給付制度選択の地域差に関する分析:確定拠出年金導入における課題の考察」『地域デザイン』(21)、pp.155-178、2023年3月)。
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