研究課題/領域番号 |
19K01924
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
東出 浩教 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (50308243)
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研究分担者 |
姜 理惠 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90570052)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オーナーマネジャー / ファミリー企業 / アントレプレナーシップ / Ethical Leadership / モラル発展理論 / 経営倫理 / 学習スタイル / EO |
研究実績の概要 |
本年度の量的および質的研究活動および成果は以下の通り。 ・量的研究 研究二年次に実施した、ファミリービジ ネス(FB)経営者、起業家、企業内新規事業リーダーなども含んだ1000名への質問票調査からのデータ分析と結果の取りまとめを図った。主な分析結果として、(1)オーナーマネジャーの創造性と当該マネジャーが率いる組織のEO(Entrepreneurial Orientation)が業績に与える大きな影響、(2)経営者・リーダーの学習スタイルにおける、創造性開発のための「観察を重視する」行動規範の重要性、などが浮き彫りになった。EOに関しては、その実務上の応用価値が、分析の結果、強く支持されることとなったことから、業種・業界を横断したレファレンスとなる数値群を取り揃えることを追加で実施し、オーナーマネジャーの日々のマネジメントに貢献する予定となっている。 ・質的研究 初年度より取り組んできた北陸地方を基にしたケースを、さらに深堀し取りまとめることを通じて、最終モデルの継続的な修正に取り組み、学会での発表へとつなげた。主な成果は、(1)オーナーマネジャー率いる長寿ファミリー企業における、家訓と次世代教育プロセスの重要性、そして(2)長寿ファミリー企業のファミリーアセットと、地域との長い相互貢献の歴史との組み合わせが、当該企業の次世代への円滑な承継や必要量のイノベーションの発露へとつながること、などがグラウンデッド・セオリーのアプローチを通じて明確になったこととなる。今後の発信として、2022年度AAOM (Asia Academy of Management)において、"An Identity-based Embeddedness Toward the Innovation Strategy in Asian Long-Lasting Firms"として発表が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下が、本年度の研究活動および成果となる。
(1)研究二年次に実施した質問票調査からのデータ分析および分析結果の実務への展開を図った。ファミリービジ ネス(FB)経営者、FB後継者、起業家、雇われ社長、企業内新規事業リーダー・フォロワー、企業内新規事業未経験者を含めた1000名が比較分析の対象となった。 (2)量的研究の主な分析結果としては、(a) 経営者・リーダーの学習スタイルにおいては、論理思考に頼りすぎないこと、観察を重視することが創造性開発につながる、(b) サンプルにおける全ての比較対照群において、オーナーマネジャーの創造性と当該マネジャーが率いる組織のEO(Entrepreneurial Orientation)が業績に影響を与える、(c) ファミリー企業においては、絶対値としてのEOは対照群と比し低い数値ではあるものの、EOの企業業績に与える影響は依然大きい。EOは、競合との相対的高低が結果に影響を与える、などが挙げられる。中でも、事業業績との強い相関を示したコンセプトに焦点を絞り、学会での発表につなげた。 (3)質的研究においては、初年度より取り組んできた北陸地方を基にしたケースを、さらに深堀し取りまとめることを通じて、最終モデルの継続的な修正を図った。質的分析においては、グラウンデッド・セオリーのアプローチを主にし、axialコーディング結果を中心に最終モデルへに反映し、学会での発表へとつなげた。 (4)質的分析の成果としては、(a) 地域とファミリービジネスのナレッジスピルオーバーのプロセスの可視化、(b) オーナーマネジャーに率いられた長寿ファミリービジネスの家訓を基礎においた次世代教育プロセスの可視化、(c) ITT(Innovation Through Tradition)におけるファミリーアセットの活用プロセスの提示、などが主たるものとなる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)量的研究においては、これまでに収集したデータセットから、オーナーマネジャー率いるファミリービジネスやベンチャービジネス、また社内新規事業プロジェクトにおいても、EO(Entrepreneurial Orientation)の業績へのインパクトの大きさが明確となった。EOに関しては、その実務上の応用価値が、分析の結果として明白になったことから、業種・業界を横断したレファレンスを策定することが、オーナーマネジャーの日々のマネジメントに貢献することから、当該データを追加で収集することとなっている。
(2)質的研究においては、これまでに収集した膨大な質的データを活用し、更なるモデルの精緻化、また研究成果の実務への展開を目指し、学会発表もふくめ、国内外を問わず積極的に発信を続ける。当面の発信としては、研究代表者、研究分担者ともに、2022年度AAOM (Asia Academy of Management)において、"An Identity-based Embeddedness Toward the Innovation Strategy in Asian Long-Lasting Firms"のタイトルで発表が査読を経たのちに、決定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究における、量的研究の成果として、オーナーマネジャー率いるファミリービジネスやベンチャービジネス、また社内新規事業プロジェクトにおいても、EO(Entrepreneurial Orientation)の業績へのインパクトの大きさが明確となった。EOに関しては、その実務上の応用価値の高さに照らし、業種・業界を横断したレファレンスとなるデータセットを蓄積することが、オーナーマネジャーの日々のマネジメントに大きく貢献することが示唆されることから、当該データを追加で収集することとした。 当初は、データの収集・分析を研究三年次において完了する予定であったが、コロナの影響もあり、担当するインターネット調査会社とのやりとりも踏まえ、年度中のデータ収集の完了は困難との判断に至った。 若干の遅れにはなるものの、2022年7月を目処に、当該データの収集を完了し、その後の分析・発信につなげていく予定となっている。
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