研究課題/領域番号 |
19K01925
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
小泉 京美 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (70582120)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日系海外現地法人 / 現地採用 / 人材雇用戦略 / 海外キャリアパス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、自主的に海外現地採用者として渡航した日本人就労者と受け入れ企業側の双方の雇用意識のギャップを調査し、「邦人現地採用者」が日系現地法人子会社に継続就労できる環境整備のための海外就労のあり方を探ることである。リーマンショック以降、海外では即戦力人材を求める市場が増加しているにも関わらず、これまでの研究は就労者側の意識に焦点をあてたものが多く、雇用者側を対象に含んだものは極めて限定的であった。本研究は、海外在留邦人数統計調査(外務省)でアジアの上位国かつ、製造業中心で発展したタイ国及び金融業中心で発展したシンガポール国という発展方法が異なる国において、邦人現地採用者の現状調査及び雇用する日系企業との労使関係を定性、定量的に調査し、労使双方の観点から立体的に問題点を明確にする事である。 本研究の2019年度の実施計画はリサーチクエッションとモデルの精緻化につなげる理論研究、現地調査の計画策定および実施の3つのフェーズに分けたものを実行計画とした。理論研究は、2018年度科研費にある『若年・壮年日本人移住者のキャリア移動とライフコース展望に関する縦断調査研究』(東京大学 石田 他)の研究成果レビューを中心に実施した。現地調査の計画策定では、研究サポートメンバーと共に以前の調査で築いたバンコクの日系企業のアドバイザー経験者からのリコメンデーションと今回あらたにバンコク商工会議所のメンバー企業から訪問候補企業を厳選した約30社のリストアップを行った。独自のアンケート調査票を作成し、メールでの調査協力依頼と合わせて訪問日程調整を行い、最終的に20社の現地法人訪問計画が策定できた。現地調査実施は2020年2月18日~2月22日に行ったが、訪問先で様々な協力が得られ計画通りの実施になった。帰国後、研究サポートメンバーと共に集中的に収集データの整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、日系現地法人と邦人現地採用の労使関係の課題と解決方法の示唆を得るところまでを一定のゴールとしていた。検討モデルの形成のベースとして『若年・壮年日本人移住者のキャリア移動とライフコース展望に関する縦断調査研究』(東京大学 石田 他)の研究成果レビューを踏まえた上で、タイ・バンコクに拠点を持つ日系現地法人18社の訪問する事ができた。業種は商社、メーカー、建設、人材紹介コンサルタントと幅広くカバー出来たので、これは当初予定していた以上の成果である。現地調査では、事前に独自のアンケート調査票を作成し、以下の項目の調査を実施した。1)現地採用の就労者数、採用企業数の推移(アンケート、JETRO提供の情報整理)、2)現地採用者の雇用状況、条件、労務環境など(インタビュー調査)、3)現地法人のキャリアパス、人材開発、研修について(インタビュー調査)、4)現地採用者への期待、採用後のギャップの有無(インタビュー調査)、5)海外駐在から現地採用への雇用形態変更の実際のケーススタディ、6)就労者の早期退職、転職の複数のケーススタディ。これは予定通りの内容を入手する事ができたので、本年度は、ほぼ予定通りの研究実績が得られたと言える。 2020年2月の現地調査はCOVID-19の渡航規制の直前に現地に入る事が出来たのは幸運であった。しかしながら帰国後はコロナ禍の緊急対応で関係機関や企業、法人との連絡や調整が全く止まってしまったので、年度内に整理確認すべき内容確認が停止した。その分は今後の研究計画の中でキャッチアップを行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では、2019年度にタイ・シンガポール双方の現地調査をする予定にしていた。本年度の検討を進める中で、タイ・バンコクへの現地調査に絞ることが重要であると判断したのでシンガポール調査は2020年度にタイへの二次調査と併せて実施する計画修正を2019年12月に行っていた。しかしながら世界的なコロナ禍は2020年度内には収束しきれない見込みとなっており、再度、2020年度の計画見直しを行う事とする。本年度は日本国内での活動を念頭に置いて、1)アンケートのWEB調査の充実、2)海外とオンライン会議システムなどを活用したオンラインインタビューの取り組み、3)現地法人の日本本社側の調査、4)中間報告としての国内学会への成果発表、これら4点に研究のウエイトを置いて今後の活動を推進してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた海外現地調査(シンガポール・タイ)は、コロナ禍により実施見込みがつかないため、WEBを活用したアンケート調査に切り替える予定である。その調査費用として次年度60万円を予算計上する。 使用計画 1.アンケート調査計画策定~8月末 1.調査会社選定及び調整~9月末 3.アンケート調査~10月末 4. 結果回収および分析~12月末
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