本研究では営業職従事者に対して3つの調査を行った。まず2021年には、コロナ禍による営業活動の影響を検討するために、営業活動の方法や目標に変化が生じたかについて聞き取り調査を実施した。顧客や社内でのコミュニケーションや情報共有がオンラインとなったが、仕事内容に大きな変化がなかったこと、2021年はコロナ禍の影響を考慮した営業目標に修正される企業と、コロナ禍の影響が依然として読み切れない企業が混在することを確認した。 また人的ネットワーク活用の状況把握を行うためのプレ調査も実施し、人的ネットワークの活用に関してはやや個人顧客を担当する営業職従事者のネットワーク活用における多様性が低く、情報入手傾向も低いことが示唆された。 2022年は、これまでの調査結果を踏まえて、個人顧客と法人顧客担当営業職従事者に分けてアンケートの本調査を実施した(それぞれ回収データ数2000)。これらのデータを利用して、①人的ネットワーク活用の状況を仕事遂行における相談相手数、②経路の多様性(社内外、営業非営業、仕事外の友人・知人など)、③重要な情報を入手した経路の多様性といった3つの指標を抽出し、個人の仕事パフォーマンスとの関係を検証した。結果はいずれもプラスの効果を示し、人的ネットワークの活用、とりわけ幅広く相談、情報収集を行うことで仕事遂行上、重要な情報の入手につながり、それが仕事の成果につながることが示された。さらに人的ネットワーク活用の要因について、出向や海外赴任などはネットワークの多様性を広げ、また営業チーム内でコミュニケーションや情報共有を積極的に行うほどネットワークが外部へも広がる傾向が確認できた。このほか人的ネットワークと人的資本の蓄積との関係についても検証する予定である。 以上の研究成果は学会発表および学術雑誌の掲載するために、現在とりまとめ中であり、今年度中に適宜、発表していく。
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