研究実績の概要 |
2022年度は,研究最終年度として研究課題の解題に向けた最終的な取りまとめを行った。具体的には,拙稿[2023],「ASEAN諸国での自動車部品メガ・サプライヤーの機能配置:日独主要企業の比較分析」『関西大学商学論集』67(4)他での研究がそれに該当する。本論文では,ASEAN諸国での自動車部品企業(日独メガ・サプライヤー4社)の進出状況を整理し,その特徴を明らかにした。明らかになった事実は,世界規模での競争力を誇るドイツのメガ・サプライヤーといえども,当該市場での競争に劣後する場合は進出国の数や各拠点の機能配置面で必ずしも他国企業を圧倒するわけではないということである。また各社のASEAN諸国での海外展開のあり方は,各社の重点(国)市場の構成比率を投影したものになっていた。すなわち,世界に冠たるメガ・サプライヤーといえども,グローバル市場のいずれにおいても万能選手というわけではなく,そのルーツとなる市場を中心とした事業展開地域の偏りがまだ濃厚に残っていることを指摘したのが本論文の意義である。 ただし,最終年度の成果を含め研究期間全般にわたり,不本意ながら本研究が科研費申請課題への直接的な解題をなし得たとは言いがたい。なぜなら,本研究課題で明らかにしようとした現地調達率の実態解明は,各社ASEAN現地法人への直接的なアプローチが必須であるにもかかわらず,研究期間全般に続いた新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延で計画どおり実行できなかったこと,そして代替的に行った外資系企業日本法人での調査は機密保持の制約が大きく十分に成果公表に繋げられなかったからである。しかしながら,現地調査こそできなかったものの各種文献・統計資料調査で部分的にそれを代替し,かつ現地調達以外の海外機能に分析対象を拡げ,計画では予見しなかった事実を突き止めるという一定の成果はあった。
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