2022年度は、これまでのインタビュー調査等から得られた知見をもとに、オンラインによるアンケート調査を実施した。本調査では、家族形成期にあたる可能性の高い20歳代後半から50歳代の大学および研究機関に所属する男女研究者(理系・文系)を調査対象とし、職務内容の違いを考慮し、民間企業に在籍する研究者や各種学校で研究にも従事する教員は対象外とした。また、コモンメソッドバイアスを排除するため、2時点での調査を実施した。調査の実施は、全国の男女研究者のモニターを有するオンライン調査会社に委託した。調査項目は、当初の計画内容に加え、新型コロナウイルスの感染拡大が研究・教育活動、および研究・教育活動と私的生活との両立に与えた影響を問う項目を含むものとした。本調査のように、アカデミアの研究者に限定した場合に、特に女性のサンプル数を確保することが容易ではないと予測されたが、男性430件、女性164件のデータを得ることができた。本調査から得られたデータを用いて分析を行い、2023年度に開催される学会の年次大会において発表できるよう準備を進める予定である。 また、所属学会の年次大会において、大学院生や若手研究者向けに若手研究者のキャリア形成と育児との両立をテーマとするセッションを企画し、話題提供者として本研究およびこれまでの関連する研究から得られた知見を紹介した。セッションを通して、若手研究者のキャリア形成と育児との両立については、当事者および将来的にそれらを経験する可能性のある若手研究者からの関心が高く、本研究テーマの重要性をあらためて実感したため、今後も研究成果を広く社会に発信していきたい。 さらに、これまでに集めたデータを用いて分析を行った女性研究者・技術者のワーク・ファミリー・エンリッチメント(仕事と私生活における役割間の相乗効果をあらわす一形態)に関する共著論文を執筆し、掲載された。
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