研究課題/領域番号 |
19K01935
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
坂川 裕司 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40301965)
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研究分担者 |
森村 文一 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80582527)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Market Orientation / CRM / SCM / Retailing / Marketing Capabilities |
研究実績の概要 |
2020年度は前年度までの研究作業の進捗状況を前提として,データベース構築を通じて把握された事例を踏まえ,また先行研究のレビューから得た知見を利用し,本研究における仮説,分析枠組みを構築する予定であった。この点については,コロナ渦の影響を受けることなく,大半の作業を進めることができた。加えて以下に述べる2点の研究を通じて得た新たな知見をもとに,研究枠組みを修正する作業を行った。第一に委託研究を通じて,店舗を利用する顧客の行動パターンを識別することができた。この分析結果から,顧客は複数小売店舗の組み合わせについて行動パターンを形成していることを発見した。このことから小売企業の市場編集能力は,微視的な店舗レベルと,巨視的な地域あるいは事業レベルという異なる集計水準において,それぞれに形成される可能性を発見した。この発見から店舗を利用する顧客のニーズを充足しようと場合,小売企業の市場編集能力は,店舗商圏を単位とした部分最適化に適するように形成されると推測できる。また顧客の店舗買い回り行動を踏まえた地域あるいは事業レベルのニーズを充足しようとする場合,それは店舗商圏ではなく,複数の店舗商圏によって形成される小売市場を単位とした全体最適化に適するように形成されると推測できる。第二に国内小売企業の経営者層を対象とした質問票調査への参加を通じて,市場編集能力の形成にBid Data Capabilityの重要性が高まっている可能性を認識できた。とくにコロナ過において,事業経営におけるAI,Big Dataの活用の重要性は短期間のうちに増大したと考えられる。そこで昨年度,本研究は,研究計画時点において考慮外である経営環境の変化を積極的に取込み,Big Data Capability概念を含めて,研究枠組みを再構築することに取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通りであれば,2021年度に実施する第一回質問票調査において質問項目として使用される概念,尺度を絞り込み,確定する予定であった。しかしながら「研究実績の概要」に記載したように,昨年はじめから続くコロナ過の影響は,企業の経営環境を変化させ,企業に環境適応的な行動を強いている。このような状況を踏まえて,分析枠組みに含める概念,因果関係を再考することにした。これに伴い,文献研究の対象領域が拡大したため,年度初頭に想定した計画よりも「やや遅れている」という感触を持っている。しかしながら,この遅れは本研究の価値を損なうものではなく,今年度以降において取り戻すことができると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は前年度までの研究作業の進捗状況を踏まえて,本研究の第一回質問票調査を実施する予定である。この質問票調査の主目的は(1)質問票調査項目を精緻化すること,(2)第二回質問票調査における調査協力企業および調査協力者を確保すること,そして(3)分析枠組みおよび仮説に関して問題点を発見すること,である。この第一回調査は,第二回調査に対するプレ・テストとしての役割を担う。その理由は,本研究において,市場編集能力という独自概念を捉える尺度を開発するためである。なお報告時点,コロナ過の状況が回復基調にないため,質問票調査の実施タイミングについては本年度後半を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ過において、当初予定していた研究出張をすべて取りやめた。その結果,次年度使用額が生じた。本年度、コロナ過が収束し,出張が可能な状況となれば、その際の経費として使用する予定である。
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