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2022 年度 実施状況報告書

The Impact of Market Editing Capability on Business Performance in Japanese Retailing

研究課題

研究課題/領域番号 19K01935
研究機関北海道大学

研究代表者

坂川 裕司  北海道大学, 経済学研究院, 教授 (40301965)

研究分担者 森村 文一  神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80582527)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワードMarket Orientation / CRM / SCM / Retailing / Marketing Capability / Big Data Analysis / Retail Marketing
研究実績の概要

前年度までの研究作業を踏まえて,Big Data Analysis Capability に焦点を当てた質問票調査を実施し,定量的な分析を試みた.その成果の一部は国際ジャーナルにおいて公表された.また国内小売企業におけるBig Dataの実践的な活用について聞き取り調査が行われた.多くの企業の内部に蓄積されている情報は,商品情報,顧客情報,取引情報,SNS関連情報である.企業はこれらの情報に,競争状態に影響を及ぼす情報を加味して,何らかの相関関係を見いだし,そこに何らかの意味づけを行うことにより,big data を構築し,big data analysis を行っている現状を把握した.この現状から,国内企業における big data analysis および big data analysis capability の戦略的役割は模索段階にあり,関連する技術および能力において発展途上段階にあると認識した.しかしながら実施された調査の分析結果は,big data analysis capability と 事業成果の間に正の相関間関係のあることを示した.この分析結果に当てはまる企業に共通している点は,big data を分析することの目的が,市場の変化に対して先行することではなく,むしろ市場の変化に対して迅速に反応することに置かれている点である.市場志向の視点から言い換えるならば,先行的市場志向に基づくマーケティング行動よりも,反応的市場志向に基づくマーケティング行動が,big data analysis と関連付けられているのである.小売企業のマーケティング能力の一部である市場編集能力と関連付けるならば,ある標的市場の存在を想定して形成される品揃え,品揃えに関する情報を伝達し知覚される魅力度を高めるマーケティングは,行為主体である小売企業の採用する市場志向,すなわち先行的か反応的かという点を前提に計画され,実行される可能性が明らかとなった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度の進捗状況を踏まえて,2022年度は,ビッグデータの活用状況に関する企業実体の調査を一次資料,二次資料を用いて行われた.また企業におけるビッグデータの活用状況を把握する目的から,質問票調査が実施された.その結果,ビッグデータの活用に関する関心度は高いものの,小売業においては,その活用様式が多様であり,成果に及ぼす影響力を限定的にしか確かめることができなかった.そこで,市場編集能力に対するビッグデータ分析能力の影響を捉えるために,商品開発だけではなく,商品調達および商品供給も含めて,品揃え形成に関わる開発-調達-販売システムの改善および改良に対する影響力を考察対象にすることとした.その結果,調査に関する観察対象領域が拡大した.これに対応して先行研究のレビューを開始し,先述した国内企業の現状に合わせた仮説の再構築に取り組むこととなった.以上の点を踏まえて,現状までの進捗状況は「やや遅れている」と判断した.

今後の研究の推進方策

2023年度は,修正された仮説および分析枠組みを反映させた設計途中である質問票調査を実施し,分析に必要なデータを収集する.これに引き続き収集されたデータの分析を行う.戦略的に活用されているBig Data について測定し,その探索・収集・分析に関する内部化・外部化の状態,内部組織における活用スタイルを通じて,標的顧客に提供される品揃え,並びに品揃えの知覚価値を高めるマーケティング能力に及ぼす影響,さらに事業成果との関連性について明らかにする.少子化および高齢化に加えて,近年,物価の上昇と消費マインドの低迷が,小売業を取り巻く経営環境を変えつつある.先行研究によれば,不確実性の高まる経営環境においてほど,Big Data を活用したマーケティングの重要性は高まる.この背景のもとで,Big Data Analysis Cpability による事業成果の影響を,マーケティング能力の中核である市場編集能力を媒介するモデルによって明らかにする.このモデルは,Big Data の戦略的活用について2つの用途を識別する.1つは,先行的な戦略的 Bid Data 活用であり,新規市場創造を目的としたマーケティングに関連する.もう1つは,反応的な戦略的 Big Data 活用である.特にここ数年の経営環境の変化を踏まえるならば,顧客のニーズの変化に対して迅速に対応できる能力(Customer Agility Capability)が,事業成果に及ぼす影響力を高めつつあると考えられる.特に標的とする最終消費者と直接的取引を行う小売業において,Customer Agility Capability による事業成果への影響力は相対的に大きいと考えられる.本年度は,このような視点から質問用調査を実施する予定である.

次年度使用額が生じた理由

コロナ過に加えて,ヨーロッパ圏の国際情勢に配慮し,当初予定していた海外研究出張ならびに国内研究出張,共同研究者との打ち合わせ出張などを取りやめた。また質問票調査を実施する予定であったが,別プロジェクトにおいて質問票調査の機会を得られたこともあり,本研究の質問票調査の精度を高めることに配慮し,本研究の質問票調査の実施を延期することとした.その結果,次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] The intermediating role of big data analytics capability between responsive and proactive market orientations and firm performance in the retail industry2023

    • 著者名/発表者名
      Morimura, Fumikazu; Sakagawa, Yuji
    • 雑誌名

      JOURNAL OF RETAILING AND CONSUMER SERVICES

      巻: 71 ページ: 103193

    • DOI

      10.1016/j.jretconser.2022.103193

    • 査読あり

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公開日: 2023-12-25  

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