研究課題/領域番号 |
19K01937
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
谷地 弘安 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (10293169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 要求抽出 / 要求獲得 / 要求工学 / システム開発 / マーケティングリサーチ / 産業財マーケティング / ソフトウェア工学 |
研究実績の概要 |
ヒアリング,インタビューなどと称される技法は,要求抽出技法として高い頻度で採用されている。本年度は,こうした技法を「コミュニケーションベースの要求抽出技法(C-RE)」と総称し,その適用をめぐって意識されてきた問題と課題を概観したうえ,その克服・解決のための取り組みを展望した。 要求抽出の難しさは,クライアント側の人間といえども,システムに対する要求を遺漏なく発出してくれるわけではないこと,SIer側では練度の高い担当人材が少ないことが大きな理由となって生じてきた。このことは,C-REの聞き手・話し手双方で改善の余地があることを示すものである。一方,双方共有の方法,アプローチがあるとも考えられる。要求工学分野では,C-REの問題を克服・解決するために3つのアプローチがあることがわかった。1つは,インタビュアーの技術知識とインタビュイーの業務知識を互いに理解できるようにする支援環境をシステムとして構築するアプローチであり,2つめに熟練インタビュアーの行動をパターン化,モデル化したうえでのシステムに実装するアプローチ,3つめに要求抽出を効果的に行うための質問を開発するアプローチである。これらは要求抽出の工学的アプローチとして総括することができる。しかしながら,要求抽出は人間と人間の相互作用プロセスであり,なかでもC-REは,すぐれてその性格が濃いものといえる。また,工学的アプローチが問題としているのは要求抽出における人間的な側面であり,それをシステム的に解決しようとしている一方,その内容はマーケティング研究で対象としてきた定性的市場調査が対象とするものと大きくラップしていることが見えてきた。今後,マーケティング研究をはじめとして,大きくは社会科学的なアプローチでC-REの問題解決を検討していくというアプローチの重要性・可能性を明確に示すことができたのが,本年度の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,要求抽出技法に関する諸研究,なかでも①要求抽出技法の選定方法に関する研究,②コミュニケーションベースの要求抽出技法に関する研究の包括的なレビューを行い,論点,課題,およびアウトプットの整理を行う予定であった。それは実現できたと考える一方で,本来は前年度に完了しておくべき課題であった。 本年度は学部長2年目で,コロナ禍での授業対応など,管理行政に大きなエフォートを割かざるを得なかった。 それでも,いただいた科研費を無駄にしてはならないことを信条に,時間を見つけてはレビュー作業を行い,研究論文を1本公刊することはできた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度より,教育・情報担当の理事・副学長に就くこととなり,研究時間の捻出がいっそう困難になっているのは事実ではあります。ですが,それを言い訳にせず,研究活動に充てられる時間のさらなる創出に努力したいと思います。また,論点の絞り込みなどの工夫を凝らすことで,年度内に論文としてのアウトプットを1本は出せるべく,努力致します。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度より,自分が経営学部長に就くこととなり,大学の管理行政に大きなエフォートを割かざるを得なくなってしまった。特にコロナウイルス対応として,遠隔授業の体制整備,教職員の勤務形態変更による体制整備に大きな時間をとられてしまった。 結果として,本来調達予定であった書籍などの物品購入が進まなかったのが,大きな理由である 学部長の任期は終了したが,本年度からは教育・情報担当理事・副学長に就任し,さらに研究時間の捻出が困難にはなったが,諦めずに研究時間を創出し,必要物品の購入を進めて参りたい。
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