研究実績の概要 |
本研究の目的は,地域経済を支える「強靭な物流ネットワーク」のあるべき姿を提案することである。2019年度に構築した(テーマ1)の成果である「各地域間の『産業間の連関構造』と『物資の流動構造』を同時に分析できる『産業連関構造・物資流動構造統合モデル』」を用い,2022年度には(テーマ2) (テーマ3)で,物流ネットワークの評価手法の検討,ネットワーク評価を進めた。 (テーマ2)~(テーマ3) における全国の物流ネットワークの評価として,「平時における食の安定供給,そして,有事における不断の供給」に資する「全国物流ネットワークのあるべき姿」を検討した。わが国の幹線物流ネットワークには,有事において重大なミッシングリンクとなりうるリンク(輸送経路)が存在する。例えば,北海道と本州を結ぶ青函トンネル,九州と本州を結ぶ関門ルート・山陽線などである。ここでは,全国の物流ネットワークの評価に用いるシナリオの検討の一部として,九州と本州を結ぶ関門ルート・山陽線の災害によるリンク寸断が及ぼす北海道への影響について,平成30年7月豪雨(西日本豪雨),台風24号(平成30年9月)による「山陽線100日間不通(平成30年7月5日~10月12日)」を事例として,幹線物流ネットワーク上の途絶が及ぼす影響と強靭化に関する分析・考察を行った。鉄道貨物による輸送依存度が非常に高い北海道産農産品輸送への影響,九州発着輸送への影響,山陽線不通が全国の各地域に及ぼす経済的影響の推計に基づき,「全国物流ネットワークのあるべき姿」に関する観点と今後の課題などを導出した。
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