研究実績の概要 |
本研究の目的は,地域経済を支える「強靭な物流ネットワーク」のあるべき姿を提案することである。本研究ではこれまで, 「各地域間の『産業間の連関構造』と『物資の流動構造』を同時に分析できる『産業連関構造・物資流動構造統合モデル』」の構築(テーマ1), 物流ネットワークの評価手法の確立(テーマ2)を達成してきた。 2022-23年度には, (テーマ3)である「平時における食の安定供給,そして,有事における不断の供給」に資する「全国物流ネットワークのあるべき姿」の分析・提案を行った。2022年度には,①北海道と本州を結ぶ青函ルート,②国土の東西を結ぶ東海道線,③九州と本州を結ぶ関門ルート・山陽線などについてシナリオ分析を行い, 2023年度には,近年の状況を鑑みて,全国の整備新幹線在来線の状況(運営会社の経営状況,3セク運営会社の貨物輸送からの収入依存度など),旅客鉄道輸送における不採算路線の現状の整理を進め,これらによる貨物鉄道ネットワークの寸断の可能性も考慮し,全国9区間(①道南いさりび鉄道, ②青い森鉄道(青森・八戸間), ③青い森鉄道(八戸・盛岡間)+IGRいわて銀河鉄道, ④えちごトキめき鉄道, ⑤しなの鉄道, ⑥あいの風とやま鉄道, ⑦IRいしかわ鉄道, ⑧肥薩おれんじ鉄道)を対象とし各線区が持つ経済的価値を推計した。「強靭な物流ネットワーク」が担う全国各地域の経済的効果を示した。 これらの成果に基づき, 全国各地と北海道を結ぶ貨物鉄道ネットワークの輸送,トラック輸送,フェリーやRORO船などの海上輸送などにおける課題と今後の展望から、「強靭な物流ネットワーク」のあるべき姿を考察し,施策目標の達成,トラック輸送力低下への対応,ニーズの高まりの観点から,全国貨物鉄道ネットワークを主とした「強靭な物流ネットワーク」の在り方とその必要性を示した。
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