研究課題/領域番号 |
19K01942
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研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
平木 いくみ 東京国際大学, 商学部, 教授 (60367026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 聴覚刺激 / 解釈レベル / 社員間コミュニケーション / 感覚マーケティング |
研究実績の概要 |
本年度は、職務空間における聴覚刺激に焦点をあて研究を進めた。具体的には、社員間コミュニケーションに対して、環境音楽としてのBGMが与える効果について検証を進めた。 先行研究に基づくと、適度なノイズは人の解釈レベルを高次に導くことや(Mehta, et al, 2012)、他の感覚刺激に比べ聴覚刺激は人を高次の解釈レベルに導くことが指摘されている(Elder, et al 2017)。さらに、人の解釈レベルが高次になった場合、人は心理的距離が近い対象よりも遠い対象を好むことが明らかにされている(Zhao and Xie 2011)。これらの研究に基づくと、BGMによって解釈レベルが高次になった社員は、近い他者(同僚などの水平関係の社員)とのコミュニケーションよりも、遠い他者(上司などの垂直的関係の社員)とのコミュニケーションを望むようになると予想される。以上に基づき、BGMが社員間コミュニケーションに及ぼす効果を調査した。 まず、民間企業のオフィスにおいて1か月間、BGM実験を実施した(データ収集:2019年4月)。BGMは音楽専門会社に作成を依頼した。社内のイントラネットを利用し、BGM期間とその前後期間(BGMなし)の合計3時点でアンケート調査を実施し、社員の心理的変化を測定した。 分析の結果、BGM期間では、BGMなし期間に比べ、垂直コミュニケーションにおける満足度が有意に高まることが明らかにされた。水平コミュニケーションについては各期間における差がなったことを踏まえると、オフィスBGMは垂直コミュニケーション活性化に効果があると言える。 その後、フォローアップテストを実施し、実験で用いたBGMが解釈レベルを高次に導くことも確認されている(2019年10-11月)。現在、BGMが上下コミュニケーションを活性化するメカニズムの解明に向けて実験を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年4月にオフィスにおいてフィールド実験を実施した。その後、フィールド実験の分析を進め、仮説との整合性や知見の整理を進めた。 2019年10~11月にかけて、フィールド実験で使用したBGMが消費者の解釈レベルを高次に導くことを確認するため、フォローアップテストを実施した。関東地域の大学生を対象に、BIF(解釈レベルを測定する尺度)を用いて回答してもらっている。 2020年3月末にかけて、フィールド実験で得られたBGMの効果について、その心理的メカニズムを明らかにするため、数回にわたり実験を進めている。順調に推移していたが、3月に実施予定であった実験は、COVID-13の影響により、次年度の実施とすることとした。 今年度の成果は、2019年12月に近畿大学で開催された【日本マーケティング学会全国報告会】で報告している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、フィールド調査において明らかにされた社員間コミュニケーションへの効果を精緻に解明するため、実験を継続する。COVID-13の影響により、実験室に参加者を集める状況が厳しくなっているが、状況が打開したタイミングで再開する。また、別の視点からも研究が進められるよう検討する。 実験が実現したのち、成果報告として、学術論文へ投稿する予定である。予定では、海外カンファレンスで発表したのち、国内ジャーナルへの投稿と進める。 また、別の研究として、小売店舗における感覚刺激を用いた調査を検討中であるため、BGM実験とともに進めていきたい。
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