研究課題/領域番号 |
19K01948
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
上田 雅夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (20755087)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 主観的厚生 / 0過剰ガンマモデル / 顧客管理 / SDGs |
研究実績の概要 |
企業は利益を追求することが、その存在の目的の一つであるが、利益だけ追求すると、社会に対し様々な問題(例えば、長時間労働、環境破壊など)を引き起こす。企業は本来、消費者の生活の満足感(主観的厚生)を向上させるような商品・サービスを開発し、社会に貢献する役割を担っているが、主観的厚生の値が、企業経営の指標になっていない現在では、経営指標である売上や利益が重視され、先にあげた問題を生じさせることになる。 主観的厚生とは、自らが感じる生活の全体もしくは一部に対する満足の度合いであり、最近、経済学、心理学、社会学などの分野で、この主観的厚生が研究対象として注目されている。本研究では、マーケティングにおけるこの主観的特性に注目し、消費者が各企業に対して有する主観的厚生の値とマーケティングに関連する指標の間で、正の関係があることを確認し、確認した結果の検証作業を通して、主観的厚生を用いて企業を評価しうることについて明示することを目的としている。主観的厚生の値が企業評価に利用できれば、管理指標として主観的厚生の値が用いられ、主観的厚生を向上させるようなマーケティングが実施される機会が増える。その結果として、社会全体の幸福感が高まり、消費者にとって住みやすい社会となり、企業においても、重要な経営課題の一つである持続的な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)を達成できる。 そのような目的意識と意義の下、以下に挙げる3ヵ年の計画を立てた。2019年度はその初年度の計画に沿って研究を進め、国内の学会における報告並びに海外の学会発表のためにproceeding paperを投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3年の計画で進める予定をしており、初年度の2019年年度は「過去の研究のレビュー、調査の実施、調査データ(含む実績データ)の分析、分析結果のまとめ」を行うという予定であったが、8月に調査を実施し、調査したデータと調査対象者の購買実績のデータを分析し、10月の日本消費者行動研究学会の全国大会で発表した。10月の発表は対象とした企業を小売業の2社に限定していたが、その後、小売業、製造業の2業種、8社(4社/1業種)に拡大し、あわせて分析モデルの検討を行い、2業種間で、主観的厚生の値と購買点数などのマーケティング管理指標との関係を分析した。分析した結果を見ると、主観的厚生の値が高ければ、購買点数や口コミなどの数値も高くなるという結果が得られ、主観的厚生の値を用いた顧客管理、マーケティング施策の効果検証の可能性が示唆された。こちらの結果については、2020年10月の国際学会発表のためにproceedingの投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究も2019年4月に挙げた計画に沿って進める予定である。具体的には、2020年度の計画は「検証用調査の実施及ぶ分析、2019年度に実施した調査結果の発表(含む学会誌への投稿)」であるため、検証用の調査と調査結果(昨年度実施分も含む)の論文化の2つを中心に研究を進める予定である。検証用の調査については7月末(昨年の調査と同時期)に実施する予定である。調査を実施後、速やかに収集した調査データと実績データを用いて分析を行い、昨年に分析した結果と比較し、分析結果の安定性を確認する。本研究の目的は主観的厚生の値を用いて、企業のマーケティング管理の指標に活用可能か検討することであるため、調査で得られた主観的厚生と購買点数などのマーケティング関連の指標の数値が安定性について確認する。検証用の調査については、昨年度に行った調査と同じ項目を用いるため、調査票の設計にはほとんど時間を掛けずに済むため、調査実施後の分析と論文の取りまとめに、今年度は時間を掛ける予定である。 学会誌への投稿は、10月の国際学会で発表する内容を、発表時にもらったコメントを基に加筆し、12月末には学会誌へ投稿する予定である。また、今年度に行った調査を分析した結果については、2021年3月までにとりまとめ、2021年度中に国際学会で発表後に、こちらも論文化する予定である。 ただし、今年は新型肺炎の影響があるため、調査に何らかの影響があると考えている。調査結果への影響が大きいと判断した時は、調査自体を来年度に実施することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に調査の実施と履歴データを子運輸するための費用として、2019年度と2020年度分の科研費の請求を行い(前倒し請求の実施)、調査費用の294万円に充てた。次年度使用額が計上された理由は調査費用と履歴データの購入費の合計が、2019年度と2020年度の総計よりも低かったためである。今年度の助成金は、学会発表と論文の投稿に関する費用に充てる予定である。
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