研究実績の概要 |
本年度は、日本を輸出拠点とする海空モーダルシフト行動にスポットを当て、以下の2点を実証した。 1. 1985~2015年にわたる日本の輸出長期時系列データを分析して、海空モーダルシフトの構造変化が、2002年以降に, 相対期待運賃, 直接投資などの重要な5つの決定因において確実に発生し、それ伴って調整速度で見た市場機構が格段に機能するようになった結果, ロジスティクス対応力の優れた荷主・フォワーダー企業ほど延期型ビジネスモデルに従って行動していること、である。 2.構造変化後の2002‐2015年における日本を輸出拠点とする11か国・地域のパネル分析によって、荷主・フォワーダー企業が延期型輸送需要行動において最重視するモード選択要因が相対期待運賃であることに注目して、海空競合領域における国・地域別の空運業のロジスティクス力の強度と順位を、海空モーダルシェアの国・地域別相対期待運賃弾性値によって実質的に測定できること、である。 以上の分析結果の含意は以下の3点である。①構造変化後に海空物流市場の市場機構が真に機能し始めたので, 両市場の連結を前提にして市場選択行動を展開する荷主・フォワーダー企業が競争優位に立ち、それが国・地域のロジスティクス力に反映される環境が整ったことを勘案すれば、港湾と空港の両機能の相乗効果を発揮させる整合的な港湾・空港政策を構築する必要があること、②構造変化へのロジスティクス対応力を増加させ、優れた延期型ビジネスモデルを一層機能させて、海空競合領域をさらに発展させるには、荷主・フォワーダー企業が相対期待運賃をより正確に予測する必要があること、及び③日本の海外現地法人の三国間調達率がほぼ横ばいに推移している現状を改善するには、とりわけベリー輸送が航空貨物輸送の約60%を占める空運では既存のアライアンスを超える連携を一層進める必要があること、である。
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