研究実績の概要 |
本研究の目的は、アンケート調査によって収集した観光行動データと心理データを用い、DMOの意思決定支援を目的とした観光顧客生涯価値(CLV)推定モデルの開発と、当該モデルを用いた観光資源の観光CLVによる評価である。 関東圏の温泉地を分析対象とし、そこに訪問可能と考えられる地域の居住者に対してインターネットリサーチを行い、必要なデータを集めた。具体的には、顧客生涯価値モデルに阿部(2014, 日本統計学会)を採用し、そこで顧客生涯価値を算出するのに必要とされる直近の訪問日、これまでの訪問回数等の回答を得た。さらに生涯価値を説明する要因として、温泉地を目的とする観光旅行の際に主に期待する観光資源、回答者属性としてトラベルキャリアとライフスタイル、観光情報源の利用状況を収集した。さらに特定観光地に対するイメージと愛着を回答してもらった。これら情報から、回答者個々の観光CLVを計算し、観光資源に回帰するモデルを提案している。 今回の研究の意義として、旅行者個々の観光行動履歴データを持つことが困難なDMOが、ネットリサーチによって、どのような属性をもつ旅行者が長期的利益をもたらすか、さらに観光地域のどのような地域資源がCLVに貢献しているかを算出するモデルを開発したことであり、マーケティングの概念でいえばターゲティングや効果的なプロモーションに寄与するものである。 また、様々な施策の評価を、例えば観光客数の増減といった大ざっぱな指標で評価することはCRMの観点からは間違った意思決定に繋がる。CRMによる長期的利益を求めるのであれば、それに対応する指標である観光CLVによって、ブランディングや観光地域まちづくりの基礎となる観光資源を評価するのが妥当である。
|