研究課題/領域番号 |
19K01960
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
坂本 和子 豊橋技術科学大学, 総合教育院, 教授 (50379070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 製品デザイン / 類似性 / 模倣 / 印象評価 |
研究実績の概要 |
本研究は製品デザインに内在する類似あるいは模倣について、それらの文化的背景や消費者の印象評価を考察するものである。初年度は研究基盤を固めるため、文献レビューと研究仮説(類似性の分析枠組み、消費者イメージ形成など)の構築とプレ調査までを行った。具体的には以下の通りである。 デザインの類似は、安心感や親しみなどのプラスイメージを与える場合と、モノマネやコピーといったネガティブなイメージを与える場合がある。では何が似ていると類似度が高まるのか、また、どの程度の類似度であればマイナス心象を避けられるのか。今回は使用場面とデザインパターン数が異なる4つの製品カテゴリー(スマートフォン、炊飯器、ディパック、空気清浄機)にフォーカスし、プレ調査により、好きなもの、中間、嫌いなもののうち、色、形、向き、大きさ、付属アイテム等の異なるものを選択した。各アイテムに対して、大学生・大学院生105人を対象にベース製品との類似度レベル、類似製品の購入意向等を調査した。 これらのことから、「色」よりも「形」が類似度評価に大きく影響すると仮定されたため、数量化一類を使って、「色」と「形」の影響度、加えて類似度と購入意向の関係を分析した。結果は予想通り、どのアイテムも「形」が「色」よりも大きく影響することがわかった。加えて、デザインパターンの多い製品は非類似製品またはトレンド製品が志向される傾向にあることが示唆された。 しかし今回は時間的制約の中で、調査データの数が少なく、また属性が偏っていることなどから、大まかな傾向を掴むには有用な調査であったが、今後はあらゆる面から調査の精度をあげていく必要があると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の取り組みとして、文献レビューから始まり、プレ調査の実施まで、予定の項目はある程度消化してきたと思われる。ただ、企業ヒアリングや海外調査に関しては、時間的制約等の理由と、プレ調査を踏まえた上での実施の方が有益と考え、本年度は見送ることとした。
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今後の研究の推進方策 |
初年度で得た知見や、調査での課題を踏まえ、2年目以降はさらに調査フレームの構築に力を入れていきたい。特に、今回の調査において、製品の類似度判定に形が重要である可能性が示唆されたが、これは製品カテゴリーの選定に大きく影響されるため、次回は製品カテゴリー選定の精緻化を図る必要があるだろう。さらに、調査から新たに導出された課題として、主観評価による知見、つまり人間の類似基準のパターンが機械学習等から得られる類似評価とどこがどれほど異なるのか等を明らかにすることや、画像検索システムへの適用、また「色」「形」といったデザインの属性だけでなく、個人特性(例えばデザイン重視か機能重視か)等のデータ投入により、類似度評価にどう影響があるのかなどを丁寧に検討していきたい。 しかし、コロナウイルス等の影響により、海外での調査に支障をきたす可能性もあり、また、本年度検討していた企業ヒアリング等も難しい可能性がたるため、次年度も国内中心の調査を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年、6月~11月にかけて、母親の介護、入院、逝去により、調査等に支障をきたし、十分な予算執行ができなかったため、次年度はその分の予算を追加して、本年度予定の調査を含めた内容で行う予定である。
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