研究課題/領域番号 |
19K01961
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
塩地 洋 京都大学, 経済学研究科, 教授 (60215944)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自動車流通 / フランチャイズ・システム / 専売制 / 国際比較 / ディーラー・モール / ディーラー・グループ |
研究実績の概要 |
次世代の自動車流通を検討する際には,新車流通とにも中古車流通そして自動車が使用済(廃車)となった後の解体/リサイクルのプロセスがきわめて重要である。その観点から日本から太平洋島嶼国に輸出された中古車が使用済(廃車)となった後に,島嶼国に解体/リサイクル設備が整備されていないゆえに,大量に放置されている事態の解決策を検討することを本研究の重要な一部として取り入れた。かかるテーマで本研究代表者は下記の学会報告をおこなった。 日本流通学会関西・中四国部会(於大阪商業大学)「深刻化する太平洋島嶼国放置車両問題」2019年4月, 多国籍企業学会全国大会(於明治大学)「太平洋島嶼国における放置車両問題の解決のために」2019年7月, 日本経営学会(於関西大学)「太平洋島嶼国の放置車両問題-フィジー,トンガ,サモアの調査から-」2019年9月, 日本流通学会全国大会(於明治大学)「パラオにおける自動車解体と金属スクラップ輸出-放置車両問題の解決のために-」2019年10月, 国際ビジネス研究学会第26回全国大会自由論題(於立命館大学茨木キャンパス)「自動車産業における部品国産化ライフサイクル」2018年11月, 産業学会西部部会(於九州大学)「自動車産業における部品国産化ライフサイクル」2019年12月 こうした学会報告のために,2019年9月にパラオで現地調査をおこなった。パラオではJICAの協力の下,解体/リサイクル工場の取材を実施した。また次世代の自動車流通を考える際にはきわめて重要な革新事例である中国の自動車流通市場におけるディーラーモールとディーラーグループの現地調査を2019年8月に実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画(本研究でどのように,どこまで明らかにしようとするのか)に基づいて,第一に,まず先進国の自動車メーカーの経営企画部門や販売部門で,自動車メーカーとディーラーがフランチャイズ・システムにおいて陥っている困難性を体系的に収集する調査を開始した。まず日本国内のトヨタ自動車および日産自動車,本田技研工業等のメーカーとディーラーの取材調査をおこなった。主として,自動車メーカー/ディーラー関係を構成する領域(商品選択方式,取引価格決定システム,テリトリー調整,インセンティブ体系)についてインタビュー調査を実施した。 第二に,自動車流通において革新の模索を試みている新たな事例の調査をおこなった。研究計画では,米国と中国のディーラーモールとディーラーグループの動向把握が本研究の一つの鍵であるとしていたが,2020年度には中国の北京と広州での現地調査を試み,中国におけるディーラーグループとディーラーモールの実態調査を実施した。 第三に, 現地調査で把握した動向と事実をたんに並記するのではなく,フランチャイズ・システム(専売制)の肯定的改革と否定的改革の座標軸の上でのそれぞれの改革事例の位置づけを明確化するための文献研究をおこなった。 第四に,本研究テーマを国際学術会議で(GERPISA等)での議論に広げていく試みの一つとして,2019年6月に京都大学において開催された東アジア経営学会国際連合(IFEAMA)の第15回国際大会(本研究代表者は大会組織委員長かつ国際連合会長)において自動車産業関連のセッションを持ち,意見交換をおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
第一に,フランチャイズ・システムの困難性に関する自動車メーカーとディーラーに対する取材調査については,昨年度に続き今年度も継続する。その際,トヨタ自動車が四つの流通系列をなくし,全車種併売に2020年5月に転ずるので,このテーマをフランチャイズ・システムの困難性の問題と関連づけて調査する。 第二に,本研究の中心課題の一つである米国と中国のディーラーモールとディーラーグループの調査を実施するために,2020年8月に中国に10日間程度の現地調査をおこなう。中国では汽車流通協会や北京亜運村等のディーラーモール,一汽豊田汽車のディーラーグループを取材調査する。また自動車流通経路のあり方に影響を及ぼすという観点から中国における電気自動車の普及,そのための車載電池産業の動向,自動運転車の普及等についても調査する。 米国については研究計画に記したように2020年6月に米国ミシガン州デトロイトでおこなわれる予定であったGERPISA国際大会が新型コロナウィルス問題で中止になり,また米国への渡航が不可能となり,米国における調査は9月以降に延期となっている。 第三に,太平洋島嶼国の放置車両問題については,2020年9月以降の時期にソロモン,バヌアツ,パプアニューギニアの現地調査をおこなうことを検討している。ただし新型コロナ問題が解決しない限り,不可能となるので,その際には日本国内の自動車のリサイクル問題にテーマを部分的に変更し,取材調査をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症のために,ソロモン等での調査ができなかった。 米国,中国などとともにソロモンなどの調査を行う。
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