研究課題/領域番号 |
19K01970
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
齊藤 嘉一 明治学院大学, 経済学部, 教授 (50328671)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソーシャルメディア / いいね / 属性マッチング / 社会的紐帯 |
研究実績の概要 |
本年度は,日本のSNSにおいて収集されたデータを用いた実証研究と,アメリカのレビューサイトのデータを用いた実証研究を行った。これらの研究では,属性マッチング仮説と社会的紐帯による調整仮説が検証された。これらの仮説はそれぞれ,「自分が過去に投稿したクチコミと類似した属性を持つクチコミに対して,よりいいねしやすい。」「社会的紐帯を持つ他者よりも,見知らぬ他者が発信したクチコミのいいね意思決定において,属性マッチングはより大きな効果を持つ。」というものである。 日本のSNSデータを用いた研究では,クチコミの本文に関連する属性(長さ,感情価,絵文字)に加えて,添付された写真についてのマッチングの効果も検証された。具体的には,AIによる画像認識サービスを用いて写真をコーディングし,写真間のマッチングの程度を測定し,写真マッチングといいね意思決定との関連性が検討された。その結果,自分が過去に投稿した写真と類似した写真に対していいねしやすいことが示され,写真マッチング仮説は支持された。また,本文に関する属性についても,マッチング仮説を支持する結果が得られた。この実証研究では,写真,および本文に関連する属性についてのマッチングの効果は,社会的紐帯によって異なることも示され,社会的紐帯による調整仮説も支持された。 アメリカのレビューサイトのデータを用いた実証研究でも,レビュー本文の長さと評価得点について,マッチング仮説と社会的紐帯による調整仮説を支持する結果を得た。この研究の成果は,41th ISMS Marketing Science Conferenceにて発表された。 このように,属性マッチング仮説と社会的紐帯による調整仮説は,異なる国(日本とアメリカ)の,異なる性質のソーシャルメディア(SNSとレビューサイト)において支持された。このことは,これらの仮説の外的妥当性を高めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度と2020年度は観察的研究を行うことを予定していた。実際に,2019年度は2つの観察的研究を行った。したがって,現在までの研究のペースは順調と言える。なお,当初は日本のSNSにおいて収集されたデータのみを用いる予定であったが,これまでにアメリカのレビューサイトのデータを用いた実証研究も実施した。この点で,計画した以上の成果を得ていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,引き続き観察的研究を行う。そこでの課題は,AIによる画像認識サービスを用いた写真コーディングの精度である。他の研究との差別化を目指し,AIによる画像認識を用いたが,その精度については検討が必要と考えている。2020年度はまた,観察的研究と並行して,実験的研究を計画していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由 写真のコーディングのためにAIによる画像認識サービスを用いた。写真枚数が予定よりも少なかったため,費用も小さくなった。 次年度使用額の使用計画 画像認識サービスによる写真コーディングの精度を検証するために用いる。
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