研究課題/領域番号 |
19K01971
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
涌田 龍治 京都産業大学, 経営学部, 教授 (70433505)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 収益性 / 顧客維持率 / ディリクレモデル / スポーツ / ロイヤルティ・プログラム / サービス / プロモーション / レパートリー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、サービス業における収益性と顧客維持率およびロイヤルティ・プログラムの関係を明らかにすることにある。具体的には、クレジットカードや生命保険などといった金融サービスの収益性はディリクレモデルで導かれる理論値から顧客維持率の観測値が正に乖離するほど高まると説明できるにもかかわらず、プロスポーツ・サービスの収益性はこのような乖離では十分に説明できないのはなぜかを問う。本研究では、試合や映画の結末がわからないため魅了されるといったように、消費者が事前に商品評価を求めず知覚リスクを下げようとしないサービスでは、再購買時の割引提示によって商品情報を正確に伝えるロイヤルティ・プログラムがかえって購買意欲を下げてしまうために、上記結果が生じることを検証したい。 四年計画の一年目にあたる本年度は、問題とする現象の前提および実態把握に努めた。一般に、プロスポーツ・サービスは、金融サービスなどの大規模組織が提供するサービスとは異なり、十分なマーケティングを行っていない可能性が指摘されている。そこで、現状のプロサッカーチームが、他のサービス業と同様のマーケティング努力を行っているかどうかを確認した。また、異なる年度のデータを使っても、生命保険業の収益性が顧客維持率の乖離で説明できるかどうか、さらに、同じサービス業であっても、ディリクレモデルによる理論値がベンチマークの機能を果たさない場合があることを確認した。これらの前提を確認するとともに、生命保険業とは異なりプロスポーツの収益性が顧客維持率の乖離ばかりでなく、ロイヤルティ・プログラムから負の影響を受ける実態も確認した。 以上の知見は、著書1本、論文2本、学会報告2件にまとめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、金融サービスやプロスポーツ・サービスと隣接するサービス業を対象に、アンケートを実施し、複数のサービス間の比較を行う予定であった。しかし、その相違を明瞭にするために、問題とする現象の前提および実態把握をせざるを得なかった。現象の前提と実態は、かなり精緻に明らかにでき、国際学会などの審査も通過して報告され、一部を論文にまとめることができた。ただし、一部の国際学会が開催中止となったために、成果の報告がやや遅れることとなった。 以上から「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画二年目にあたる次年度は、当初計画しているアンケートを実施し、さらに被説明変数のデータを収集して、詳細に分析する。 第1に、問題とする現象である生命保険業の収益性が、ディリクレモデルで導かれる理論値から顧客維持率の観測値が正に乖離するほど高まると説明できるにもかかわらず、プロスポーツ・サービスの収益性はこのような乖離では十分に説明できず、再購買時の割引提示からは負の影響を受けることを示す。さらに、この説明モデルは、消費者が事前に商品評価を求めず知覚リスクを下げようとしないサービスにおいてのみ、妥当性を持つことを示す。 第2に、第1の現象が、国外であっても妥当性を持つことを示す。 以上の成果をまとめ、学会に報告し、論文として投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初予定のアンケートの対象および質問項目を選定するために、現象の前提と実態把握が必要となり、その作業を集中的に行った。 次年度は、当初予定のアンケートを実施する予定である。調査対象とするべき市場が明らかとなったため、サンプルの抽出とアンケートの質問項目を精査して実施する予定である。また、この成果を学会で報告するため、旅費に充て、論文化するために、英文校閲費などに充てたい。
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