本研究の目的は、サービス業における収益性と顧客維持率およびロイヤルティ・プログラムの関係を明らかにすることにある。具体的には、クレジットカードや生命保険などといった金融サービスの収益性はディリクレモデルで導かれる理論値から顧客維持率の観測値が正に乖離するほど高まると説明できるにもかかわらず、プロスポーツ・サービスの収益性はこのような乖離では十分に説明できず、ロイヤルティ・プログラムから強い負の影響を受けているのはなぜかを問うた。 最終の2022年度は、2021年度に修正した分析枠組みを用いてアンケートを行い、データを解析して、結果を論文としてまとめた。残念ながら、査読付き論文に掲載されるまでには至らなかったが、多くの関係者に広く助言を求めるため、英文で論文をまとめることとなった。 本研究において明らかになったことは、大きく、次の2点である。 第1に、収益性とロイヤルティにつながる顧客維持率との関係は、サービス業が顧客に提供する消費環境の類型に応じて、ロイヤルティから収益性へとつながる因果の強さに濃淡が生まれうるため、関係性の強さにも濃淡が生まれうる。このような可能性があるため、プロスポーツ・サービスの収益性が顧客維持率で十分説明できなかったのかもしれない。 第2に、プロスポーツ・サービスの収益性は、ロイヤルティ・プログラムから強い負の影響を受けていると言えるけれども、実際には、プログラムの内でも割引を伴う価格プロモーションが行われると顧客満足に強くネガティブな影響を与え、その不満足が収益性に影響を与えていることが明らかとなった。これは、価格プロモーションが顧客満足のポジティブな影響を与え、その満足感が収益性に影響を与えている生命保険業とは対照的であった。しかし、このような現象がなぜ生じたのかを明らかにするまでには至らなかった。この点が本研究の重大な限界である。
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