本研究の目的は、旅客流動データを用いて空港における非航空系収入に影響を与える要因を明らかにすることである。その特徴(新規性)は、①非航空系収入を構成要素(商業施設のテナント収入、駐車場収入、施設賃貸料収入)ごとに分割して分析する、②旅客の流動データを用いて、旅客の「発地空港」が与える影響についても分析する、ことである。これにより、効率的な空港経営に対する示唆と、これに基づく望ましい空港政策について提案することが期待できる。 2019年度は、旅客流動データより抽出される旅客属性を変数に採用し、旅客の発地空港(発地国)が空港の非航空系収入に影響を与えることを明らかにした。2020~2021年度は、旅客の所得水準の影響を考察するため、座席等級を代理変数として分析を実施した。その結果、ファースト・ビジネスクラスの旅客比率の高い空港ほど、旅客あたり商業施設のテナント収入が低くなることが明らかとなり、こうした上位クラス旅客は、空港の商業エリアにおける(空港利用1回あたりの)消費額が相対的に少ない可能性を示唆する結果を得た。 本年度(2022年度)は、旅客流動データを活用してコロナ禍が航空輸送に与えた影響を分析できることに着目し、わが国を経由する3国間流動(国際線同士の乗り継ぎ)に関する分析を実施した。その結果、2020年4月以降の厳格な入国制限措置により日本発着の旅客流動が低迷するなかで、わが国の航空会社は3国間輸送(主に東南アジア‐北米間)に活路を見いだしていることが示唆される結果を得た。とくにLCCである「ZIPAIR Tokyo」の躍進が目立つことから、3国間の輸送需要をLCCで摘み取るモデルは、アフターコロナにおける新たな潮流になるとの展望を示した。
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