新型コロナウイルス感染症の影響により、観光客の往来が減少した中で、日本の地域産品と観光客との顧客接点マネジメントが課題となっている。このような課題の解決に向けて、地域における効果的な営業活動や販路拡大が欠かせない。営業活動や販路拡大にあたっては、従来からインターネットの活用が見られる。観光客がその地域に来ずとも地域産品を購入するという発想から、インターネットを通じた電子商取引の利用価値が高まっている。したがって、電子商取引の推進は、日本の地域産品の営業活動と販路拡大を進めるうえで不可欠な取り組みと言える。 電子商取引を通じて観光客に日本の地域産品を周知させるためには、観光客の目にとまる仕組みを設計することが望ましい。そこで、日本の地域産品のみならず、その地域全体の営業活動を担うご当地キャラクターを顧客接点とした事例研究を通じて、電子商取引における顧客接点マネジメントの業績評価を考察した。 顧客接点は、潜在顧客に製品やサービスの認識を促し、既存顧客とコミュニケーションを深める場としての役割がある。事例における顧客接点は、熊本県のご当地キャラクターである「くまモン」が活躍する場である。このキャラクターは、熊本県の「営業部長」として扱われ、熊本県の経済を支える重要な資源となっている。くまモンは国内外の催しで営業部長として活躍し、国内外の潜在観光客、既存観光客との顧客接点として機能する。 管理会計論において、地方自治体の業績評価を目的としたBSC(バランス・スコアカード)の活用に関する研究蓄積がある。そこで、熊本県の営業部長であるくまモンの影響を熊本県の営業戦略に関する戦略マップ、BSC作成に反映させた。この研究実績は,「キャラクターを通じた地域ブランド化に対するBSCの適用可能性―熊本県におけるくまモンの営業戦略から─」(『横浜経営研究』第44巻第3・4号,2024年)で発表した。
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