研究課題/領域番号 |
19K01985
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松浦 良行 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (70274149)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 利益予測 / 株価利益倍率 / 特許 / 株式市場 |
研究実績の概要 |
本研究は、特許情報による企業グルーピングの将来実現利益と株価収益率(PER)の同質性を検討のうえ、予想PERの将来利益予測能力に対する技術バイアスの存否を明らかにするものである。このため、①技術集合と予想PERの関係に関する分析、②技術集合に基づく企業グルーピングと将来利益成長の関係に関する分析、③特許企業グルーピングと予想PERの将来利益予測精度の関係に関する分析を行う。 本年度においては、これら一連の分析を実施するために、追加的かつ網羅的な文献レビューによってリサーチデザインをより具現化し、それに基づいて検証に必要となるデータセットの設計を中心に実施した。 本研究のためには、一般的な財務数値に加えて、利益予想および特許関連のデータが必要となる。このうち利益予想については、当初の計画ではアナリスト予想のみを利用することを想定していたが、サンプルであるわが国上場企業の相当数の企業は商用データベースから継続的にアナリスト予想を入手することができないため、研究結果の一般化のために、経営者予想についても過去30年にわたりデータセットを整備した。一方、特許データについては、わが国で出願された特許については知的財産研究所提供のデータベースより企業単位で整理し、連結ベースでの財務数値と特許ポートフォリオを紐づけできるようにした。さらに、国内出願特許だけでは日本企業の海外R&D拠点による特許出願やクロスボーダー型M&Aの技術ポートフォリオに対する影響を捕捉できないため、連携先であるマレーシア工科大学の教員と共同で整備を行っている。 整備したデータベースの一部を活用して、特許出願行動と資金調達の関連性に関する共同論文を執筆中である。これは、上記研究テーマ①、②に関連し、企業の財務リスクの出願行動に与える影響を検討するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために必要なデータボリュームは極めて大きいうえに、連結グループレベルでの分析のためには特許に関して親会社と数多くの子会社の関連付けが必要となるため、それらを分析可能な形のリレーショナルデータベースとするには多くの労力と計算キャパシティが必要となる。当初は、日本出願の特許データも統合したデータベースの構築をパートナー校に委託する予定としていたが、所属部局のデータサイエンスの研究者の協力を仰ぐことができたこと、また先に日本出願の特許データを活用して研究の効率化を図ることとしたため、ベースとなるデータベースの構築には当初予想していたほどの時間は要さない見込みである。その一方で、パートナー校で実施予定であった海外出願分の特許データや特許ファミリーのデータ取得は若干の遅れが出ると予想される。これは、元となる商用データベースへのアクセスがキャンパスからのみとなっており、コロナ禍の影響によって同地の研究者が立ち入りできないことによる。
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度の中頃までにはベースとなるデータベースの完成を目指し、下半期より本格的な分析を開始する予定である。所属先で入手・処理可能なデータについてはおおむね予定通り進行する見込みであるが、マレーシアのパートナー校でのダウンロード分についてはコロナ禍の影響によって遅延が生じる可能性もある。このため、日本取得分データセットの早期整備を目指し、データが準備できたものから分析を開始する。そして、令和三年度において論文執筆を重点的に行う体制を整える。
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