研究課題/領域番号 |
19K01987
|
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中條 祐介 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (40244503)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | CVC / 財務報告 / ディスクロージャー |
研究実績の概要 |
研究2年目となる令和2年度(2020年度)の研究活動は、主として、①国内外のCVC投資関連の先行研究のレビュー、②CVC関連データベースの整備、③CVCに関する事例研究、を中心に取り組んだ。 まず、①については、CVCに関する情報開示戦略、CVCに係るリターン、CVC投資とコーポレート・ガバナンスに関する研究を中心にレビューを進めた。この作業を通じて、CVC情報を開示する企業特性に関する仮説、CVC投資により重視されるリターンの種類、CVCと被投資先企業との関係に係る論点を整理することができた。今後はこれらの仮説の検証作業等に着手する。 次に、②については、令和元年度に着手したデータベースに、CVC投資実績、CVC投資情報関連情報の追加、企業規模、株主構成、財務業績等の情報の追加作業を行った。しかしながら、COVID-19の影響を受け、COVID-19以前のデータとの連続性に関する課題が生じた。分析の対象をCOVID-19以前に限定すべきか検討中である。 最後に③については、年度初めからのCOVID-19の感染拡大に伴う緊急事態宣言により、CVC担当者とのインタビューを予定通り進めることができなかったものの、戦略シナジーを重視する事例、財務シナジーを重視する事例、両方のシナジーを同等に重視する事例に分けて導入から実績までをまとめた。一般的に、投資企業内部に設けられたCVCは戦略シナジーを重視するのに対し、外部に設立されたCVCは、財務シナジーを重視する傾向があるように思われる。今後は、これらの特徴が、情報開示にどのような影響を与えているのかを明らかにしていきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
進捗遅延の主たる要因は、令和2年2月以降のCOVID-19の感染拡大に起因する。副学長として、令和2年度期初より、新年度の授業のあり方に関する方針の策定とその実施に向けた対応で忙殺されることとなった。具体的には、オンラインシステムの契約、遠隔授業の進め方に関する教員向け及び学生向けのマニュアル策定、教員及び学生のネットワーク環境の確認と必要な手当等である。その後も感染状況を見据えながら、必要な対応を検討・実施する作業に忙殺されることとなった。 また、本研究課題を進めるに当たり、企業側の取り組み状況に関する情報収集は重要な要素となるが、企業側においてもテレワークが拡がり、担当者とのコンタクトが取れない状況に陥った。COVID-19の感染拡大は、国内ベンチャー企業への資金供給活動の鈍化をもたらし、CVCに関する目立った動きも減少した。 以上のように、本務校での勤務の問題と研究対象である企業側の働き方に変化により、研究活動の進展にマイナスの影響が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる今年度においては、これまでの遅れを取り戻すために、研究の基盤となるデータベースのアップデートをスピードアップする。 次に、研究成果を着実に公表するために、レビュー論文の整理を第1フェーズとしたい。 そのうえで、第2フェーズとして、これまでに構想した仮説を整理し、検証作業に入ることにしたい。 このように研究フェーズを整理し、着実に成果を公表できるよう努める。 なお、事例研究の深掘りについては、インタビュー対象である企業側の勤務形態の問題もあるので、すでに収集した材料に基づいて、CVCへのアプローチのベストプラクティスを整理したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の一つは、COVID-19の感染拡大に伴い、副学長として対応すべき案件により、当初計画していた研究時間を確保することができなかったことである。もう一つの理由は、やはりCOVID-19の影響により、企業のCVC担当者に対するインタビューなどの出張機会の全滅、学会・研究会・各種セミナーの中止ないしオンライン化により、旅費等の支出が生じなかったことである。また、データ入力等に対する謝金についても、学生の入構を禁止したことから、雇用することができず、執行することができなかった。 令和3年度においてもCOVID-19による感染は続いており、当初計画した通りの予算執行に支障をきたす可能性は高いが、令和2年度の経験を踏まえ、感染状況を確認しつつ、計画的にインタビュー機会を設定し、旅費等の執行を心がけることとする。また、研究が遅延していることから、スピードアップを図るため、データ入力等の作業については、在宅でもできるように工夫し、計画的に謝金支出を行うようにする。
|