研究課題/領域番号 |
19K01987
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
中條 祐介 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (40244503)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CVC / 財務報告 / ディスクロージャー |
研究実績の概要 |
2022年におけるCVC投資は、コロナ禍における投資環境の先行き不透明感が払拭できない中ではあったものの、合計で229.4億円(VEC『直近四半期投資動向調査2022年』各四半期データより)となり、前年比10.8%増となった。また投資件数も176件から187件と増加した。国内向け投資が152件と前年より14件増加したのに対し、海外向け投資は35件と前年より3件減少している。また、1件当たりの投資額についても、国内向け投資が120.3百万円と22.5百万円増加しているのに対し、海外向け投資は133.1百万円と国内向けよりも多いものの、前年に比べて56.4百万円と大幅に減少している。 これらの投資状況に関する財務報告についてみてみると、2022年2月1日から2023年1月31日までに決算日を迎えた有価証券報告書提出企業のうち、有価証券報告書にCVCの記載があった企業は50社(89箇所)であった。記載箇所については、第2事業の概況で41件、第1企業の概況で29件、第5経理の状況で10件、第4提出会社の状況で8件、第3設備の状況で1件であった。 事業に関わる説明箇所での記載が増えていることは望ましい状況といえる。その中でも、「事業等のリスク」で15件、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で13件の記載が見られた。これらリスクと機会の両面から説明することが理想的であると考えられるが、この2点をセットで記載した企業は1社にとどまり、残りの企業はいずれかのみの記載であった。 以上のように、CVC投資が持ち直しつつあるものの、有価証券報告書への記載企業は発展途上にあり、また財務報告における課題も多く残されている。残りの研究期間においては、開示に関する好事例についても整理していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍に伴い、調査対象である事業会社において、CVC投資に関する動きが鈍化したこと、また在宅ワークが普及することでコミュニケーションを確保する機会が低下したことが挙げられます。 また、コロナ禍により、CVC投資の成果である戦略シナジーや財務シナジーを獲得する機会が減少していることが想定され、このような環境下で実証的な証拠を提示することが難しいことも挙げられます。 さらに、私の本務校での業務増大も重要な要素として説明しなければなりません。まず令和4年度は、本学中期計画の策定時期となり、学内の組織体はもちろん、法人法評価委員会など外部委員会からの指摘に対する対応などで相当の時間を割く必要がありました。 また、文科省をはじめとする外部機関からの助成金獲得のための申請書類の作成などにすべて関与する必要があり、これら想定外の業務増加により研究の進捗が遅延してしまいました。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍前にはほとんど見当たらなかった、第2事業の概況での記載が増加しています。高質な開示が増えることは本研究課題の後押しとなります。非財務情報としての開示が増えることは、テキスト分析も含めて研究アプローチの範囲の拡大と包括性が期待できます。 また、5月8日以降の新型コロナウイルスの5類移行に伴い、観察対象企業の対応にも変化が期待されます。 以上より、令和5年度においては研究成果の取りまとめが可能になると考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍に伴い、調査対象である事業会社において、CVC投資に関する動きが鈍化したこと、また在宅ワークが普及することでコミュニケーションを確保する機会が低下したことが挙げられます。 さらに、私の本務校での業務増大も重要な要素として説明しなければなりません。まず令和4年度は、本学中期計画の策定時期となり、学内の組織体はもちろん、法人法評価委員会など外部委員会からの指摘に対する対応などで相当の時間を割く必要がありました。 また、文科省をはじめとする外部機関からの助成金獲得のための申請書類の作成などにすべて関与する必要があり、これら想定外の業務増加により研究の進捗が遅延してしまいました。
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