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2020 年度 実施状況報告書

AI支援によるESG情報のテキスト表現評価と裁量的開示行動に関する実証研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K01991
研究機関公立鳥取環境大学

研究代表者

中尾 悠利子  公立鳥取環境大学, 経営学部, 准教授 (50738177)

研究分担者 石野 亜耶  広島経済大学, メディアビジネス学部, 准教授 (50639424)
國部 克彦  神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
岡田 斎  広島経済大学, 経営学部, 教授 (80633354)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードESG情報 / サステナビリティ / 機械学習 / テキスト / ESG評価 / AI
研究実績の概要

ESG情報は、財務情報の売上高や利益などの数値情報と違いその評価や解釈が一律ではない。本研究では、環境課題や社会課題など解釈が多様なESG情報をAIを利用することにより、従来評価が難しかったテキスト情報や写真の傾向性を客観的かつ、多くの企業情報に適用することを試みる。令和二年度は、ESG情報をもとに、4つのAIモデル構築を試みた。第1に、経営トップメッセージにおける読みにくい文章の自動判別を目的とした可読性(リーダビリティ)モデルを、第2に、経営トップメッセージにおける自社を高く評価しているかの文章の自動判別を目的としたナルシズムな文章モデルを、第3に、ESG情報開示の画像の自動判定をもとにした写真傾向を分析したモデルを、第4に、ESGレポートをもとに、ESG評価を自動判定するモデルを試みた。令和二年度はESG情報をもとの写真をもとに、画像の自動判定を目的としたモデルに関して、次の分析を行った。対象企業は、ESG評価を継続的に、且つグローバルに行っているRobecoSAM(2019)の格付け2700社のうちESG情報開示を行っている企業1,025社を選定した。それらの企業を、画像判定を自動で行うことが可能な「Amazon Rekognition」を採用した。「Amazon Rekognition」によって解析した写真は、顔認識112,643画像、物体とシーンの検出207,684画像となった。主な結果は、欧州と北米と比較して、アジア地域はより多くの人の写真を利用し、男女比では男性の方を多く写真に掲載している傾向が示された。 人の表情判定においてもアジア地域では、笑顔の割合がヨーロッパの倍以上などの違いが示された。本研究は、 ESG活動の理解促進を企図する写真利用を検討する上で包括的な分析結果とともに、企業担当者やESG情報の評価者においても定量情報やテキスト情報の内容だけなく、ビジュアル内容における読者へのコミュケーション課題や企業の信頼性向上を考慮する視点を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

令和二年度にモデル構築した経営トップメッセージにおける自社を高く評価しているかの文章の自動判別を目的としたナルシズムな文章モデルを何度か試みたがその評価数値が向上しなかった。このモデルには、ニューラルネットワークの一手法である Deep Averaging Networks(DAN)(Iyyer et al., 2015)を採用し、300社で教師ラベル数1,055を用いた。評価尺度には、精度、再現率、F 値を用いている。精度は、計算機によりラベルが付与された件数のうち、それが正解である割合を示している。再現率は、正解のうち、計算機によりラベルが正しく付与された割合を示している。F 値は、精度と再現率の調和平均であり、総合的な指標である。一般的に、総合的な指標である F 値が高ければ、性能がよいことを意味する。また、評価は、5 分割交差検定を用いた。その結果、精度は「0.37」、再現率は「0.427」、F値は「0.397」となった。したがって、3つの指標ともにその数値を高める必要がある。

今後の研究の推進方策

令和二年度の第2のAIモデルである自社評価を判別する文章モデルに関して教師データの改良を行う。これまで1文を「1」、「0」の2段階に評価していたが、「2」、「1」、「0」とラベル付けすることにより、AIによる文章の判別を高める。その他に、教師データを専門家2名のラベル付けしていたものを3人にすることにより、文章の判別を精緻にする。
加えて、令和二年度に実施した、第4のモデルである、ESGレポートをもとに、ESG評価を自動判定するモデルに関しても改良を進める。本モデルは、AIを利用することにより、ESG機関の評価のブラックボックス化を明らかにすることを目的とする。AIによるESG評価が可能になれば、評価機関だけでなく、どのようなステークホルダーでも同様の評価が活用となり、ESG評価の社会的利用が進み、ESG評価手法の寡占化が緩和されることが期待される。具体的には、ESGレポートのテキスト解析を行うためのテキストのAIツールの改良を行う。
改良されたモデルをもとに、ESG評価機関でスコアリングされていない日本企業の上場企業を対象に、AIによるESG評価を行うことで、各社のESGスコアリングが提供される。このモデルを適用したESGスコアリング結果を、海外ジャーナルに投稿し、AIによるESG評価の社会的利用可能性の点を学術的な知見として提供する予定である。

次年度使用額が生じた理由

教師データの作成にかかるESGレポートデータ収集に関する謝金および海外ジャーナル投稿の英文校正費を計上する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [学会発表] Does Environmental, Social, and Governance Disclosure Strategically Employ Visual Rhetoric? An Exploratory Global Analysis2020

    • 著者名/発表者名
      Yuriko Nakao, Aya Ishino, Hitoshi Okada, Katsuhiko Kokubu, Kimitaka Nishitani
    • 学会等名
      KAA Annual Global Meeting (KAGM) 2020
    • 国際学会
  • [学会発表] 「SDGs 時代の社会的評価指標開発への挑戦 -AI 活用と ESG 評価の視点より-」(スタディグループ最終報告)2020

    • 著者名/発表者名
      中尾悠利子, 岡田 斎, 越智 信仁, 國部 克彦, 梨岡 英理子, 野口 豊嗣, 増子 和起, 牟禮 恵美子, 研究協力, 石野, 亜耶, 夫馬 賢治
    • 学会等名
      日本社会関連会計学会第32回全国大会
  • [学会発表] 「ESG情報開示におけるビジュアル研究―グローバル企業の探索的分析―」2020

    • 著者名/発表者名
      中尾 悠利子, 石野 亜耶, 岡田 斎氏, 國部 克彦
    • 学会等名
      日本社会関連会計学会第32回全国大会
  • [学会発表] コロナ禍におけるステークホルダ重視行動と市場の反応2020

    • 著者名/発表者名
      中尾悠利子
    • 学会等名
      神戸CSR研究会 2020年7月18日
  • [図書] 第11章「SDGs ウォッシュを考えるーストーリーとしてのサステナビリティ戦略を 目指して」SDGsを考える―歴史・環境・経営の視点からみた持続可能な社会2020

    • 著者名/発表者名
      中尾悠利子
    • 総ページ数
      220
    • 出版者
      ナカニシヤ出版
    • ISBN
      4779514681

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公開日: 2021-12-27  

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