本研究では、優れた工事実行予算管理システムを構築・運用している全国の中小・零細の公共土木一式工事会社を選定し、工事実行予算管理システムをどのように運用すれば原価管理ないし利益捻出を成功裏に行えるのかをインタビュー調査を通じて明らかにすることを目的としている。この研究目的を実現するため、最終年度である本年度においては、過去の研究に基づいて次の研究を実施した。 第一に、工程管理と連動して日次損益管理システムを運用している先進的な工事実行予算管理システム導入の効果発生メカニズムを解明するために、研究開始年度から着手している中小・零細土木一式工事会社(大分県、岡山県、高知県など)へのインタビュー調査を継続実施した。その研究成果の一部を日本管理会計学会2022年度年次全国大会(開催校:明治大学)にて自由論題報告「土木一式工事会社における日次損益管理システム導入の効果発生の論理と事例」を行って意見を聴取し、モデルの改善に努めた。さらに、研究論文として、「日次損益管理システムに関する文献研究~効果発生メカニズムの解明に向けた予備的考察~」『産業經理』第82巻第3号および「日次損益管理システム導入の効果発生の論理」『青山経営論集』第57巻第4号を公表した。 第二に、中堅総合建設会社N社(大阪府)のバランスト・スコアカード(Balanced Scorecard)に関する研究を継続し、日本管理会計学会2022年度第2回フォーラム(開催校:専修大学)にて招待講演「中堅総合建設会社におけるバランスト・スコアカード構築」を行った。さらに、「建設業における目標管理制度とバランスト・スコアカード開発」『會計』第201巻第5号の論文を公表した。 以上により、JSPS科研費22K01805「中堅・中小建設会社の業績管理会計システムの設計と運用に関する研究」の研究との継続性も確保することができた。
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