研究課題/領域番号 |
19K01995
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
西居 豪 専修大学, 商学部, 教授 (30439517)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 指標間関係 / 因果関係 / 短期主義 / 長短のバランス / 利益観 / 業績評価 / 意思決定 / バランスト・スコアカード |
研究実績の概要 |
本研究は,業績評価指標間の因果関係の構造的特性から規定される複雑さが,戦略的業績評価システムにおける組織成員の評価判断や意思決定にどんな影響を及ぼすのか解明することを目的としている。4年間の研究期間の初年度に当たる2019年度には,検討意義の高い研究疑問の抽出と当該疑問解明のための実験デザインの検討を行うべく,関連文献のサーベイ,予備調査,既に入手済みのデータを用いた関連分析,コンピュータ・シミュレーションを用いた分析を行った。 複数の業績評価指標の測定結果に依拠した意思決定や判断に関する研究は,トップジャーナルを中心に派生的な広がりを見せており,それらの全体的動向を把握できるよう,文献サーベイの対象を拡張した。サーベイに基づく検討内容は研究会にて報告を行い,コメントに基づき修正を行い,さらに関連文献を追加した。 第2に,鍵となる構成概念や実験手続きの適切性・妥当性の検証のために,オンラインでの予備調査を行った。なお,この調査に際しては,利用するオンラインのシステムの選択も含めて検討を行った。当初は,AMTの利用を想定していたが,他のシステムの利用可能性も検討の余地があるためである。 第3に,個人が利益をどのようなものとして認識しているのかという利益観について,既に取得してあったデータを用いて分析を行った。分析の結果,個人の利益獲得方針の選択に利益観の高低が有意に関連していることを明らかにした。これは複数の指標の構造的関係に基づいた評価や意思決定に個人の利益観が影響する可能性があり,本研究のトピックを扱う上で無視できない要因であることを示唆している。 最後に,業績評価の基本原理やコントロールの動的過程について,コンピュータ・シミュレーションを適用した分析を行った。経験的観察が容易ではない、これらの現象も,本研究を進める上で理解しておくべき内容であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究の進捗は主に四つに分けて整理することができる。第1に,複数の業績評価指標間の構造的関係性の違いを前提とした業績評価や意思決定について,主に実験室実験によって検討を行っている先行研究をサーベイして,研究の全体的な進行状況の把握に務めた。特に,視点(指標)の種類や数,関連資料の提供といった要因が注目されている一方で,本研究が注目している指標間の構造的関係は,依然として十分な検証を受けていないことが明らかになった。 第2に,上記の文献サーベイを進めるとともに,本年度以降に進めていく実験室実験の研究デザインの検討を行い,一部の項目に関しては,オンラインにて予備調査も行った。これを通じて,核となる構成概念や実験手続きの適切性・妥当性の検証を行い,必要な箇所には修正を行うなどした。ただし,企業向けのアンケート調査の結果を踏まえて,設計する要素が一部残っていることから,引き続き実験デザインの検討は行っていく。 第3に,指標間の因果関係において結果として扱われることの多い利益について,個人がどのようなものとして認識しているのか尋ねたアンケート調査から得られたデータの分析を行った。これは,短期と長期のいずれを優先して資源配分を行うのかという,各指標の改善のための資源投入に際して重大になる問題に,個人の有する利益観からアプローチを試みるものである。具体的には,短期の利益を将来の利益のための手段としてみなすのか,それともあくまで短期の結果としてみなすのかという2つの利益観の測定を試み,これらの利益観が,利益獲得方針の見解選択に有意に関連していることが明らかになった。 最後に,本研究トピックを補完するコンピュータ・シミュレーションを適用した2つの研究については,国内査読雑誌に採択された。 以上を総合的に鑑み、本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では,本年度に企業向けのアンケート調査を実施する予定であった。しかしながら,コロナウィルス感染症予防の観点から,在宅勤務が推奨されているため,企業に対する質問票郵送調査の実施は非常に困難となっている。そのため,オンライン調査を通じて,データアナリストから直接データを収集できるアンケート調査の実施を検討中である。企業の平均的な動向を把握するだけではなく,個人の能力やスキル,経験なども踏まえた調査デザインが可能となるので,企業向けアンケートを十分に補完できるものになると考えられる。なお,企業向けのアンケートは事態の収束後に実施できるよう準備を整えておく予定である。 第2に,オンライン実験の内容や手続きは,これまでの予備調査や文献サーベイの結果を踏まえながら,修正するとともに,上記のアンケート調査の結果をうまく反映させたい。なお,オンライン実験で利用できるシステムの仕様は,度々変更されるために,調査時に最適なものを選択できるよう,引き続き動向をフォローしていく予定である。 第3に,昨年度行った文献サーベイの結果は,本年度中に,最新の研究成果をフォローしつつ,公表を目指したい。 最後に,コンピュータ・シミュレーションは,経験的データを扱う管理会計研究を補完する可能性が高く,今後も関連トピックにおける研究を進めていく予定である。
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