研究課題/領域番号 |
19K01996
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
藤井 誠 日本大学, 商学部, 教授 (80409044)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | デジタル経済 / 電子商取引 / 国際課税 / BEPS / 無形資産 / 所得相応性基準 |
研究実績の概要 |
デジタル経済における税務会計に関する問題は多岐にわたるが,1990年代には電子商取引 に関する税務問題の議論が活発化の兆しを見せていた。電子商取引に関わる課税問題として,取引の捕捉が困難になること,さらには,電子商取引が国際取引を容易にしたとの指摘がなされている。電子商取引によらない国際的な取引はそれ以前から行われていたのであり,そこでは長きにわたり,「恒久的施設(PE)+独立企業原則」が課税のメルクマールとして機能してきた。 企業活動の国際化の進展とともに租税回避の国際化もまた進化を遂げ,これに対する対応策も国内法の整備から,BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)行動計画に見られるように国際的な協調という新たな段階へと進んだ。 GAFAを中心とする多国籍企業が利用した租税回避スキームから抽出される問題点は,濫用的租税回避の手段として無形資産の移転を行い,その無形資産の存在が核となっていることである。すなわち,販売する商品がデジタル財かどうかではなく,国際的な租税回避あるいは過度の節税スキームの中に,無形資産の国際的な移転という手段を組み込んでいることにある。多国籍企業による電子経済(digital economy)における課税問題は,企業が取り扱う財の種類によるのではなく,それらの企業が有形財をいかに無形財化するかという点にある。企業が取り扱う商品が無形資産(デジタル財)か有形資産(非デジタル財)かどうかという問題と,収益を生み出す源泉が有形資産であるか無形資産(特許,意匠等の権利)あるいは知的資産(Intellectual Property:IP)であるか否かの問題は区別して考える必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究会課題について助成を受けている令和2年度から令和3年度の間、税務会計研究学会における特別委員会の委員長として、本研究会課題に直接関連する研究活動を行い、令和3年度には同学会全国大会において中間報告を行い、今年度の全国大会において最終報告を行う予定となっている。 この間、定期的に開催してきた研究会および学会は、いずれもリモートでの開催となり、いくつかの懸案事項については、意見交換や議論を十分に深めるに至っていないことや、資料の共有化に限界が生じている。 新型コロナウィルスの影響により、この間、研究会及び学会はすべてオンライン開催となり、議論を深めることができていない事情がある。また、海外への出張が全面的に不可能となっていることから、諸外国の動向が事実上インターネット経由に限定されていることから、アクセスできる情報に制限が生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、6月以降に研究会の開催回数を増やすとともに、税務会計研究学会の全国大会において、本研究課題を扱う研究報告を行うことが決まっており、また、非営利法人研究学会の全国大会においても、本研究課題に関連する研究報告を行うことが決まっている。 研究の手法としては、新型コロナウィルスの影響が未だ残っていることから、前年度までの研究成果を発展させ、主に文献研究や規範論研究を行う。 また、これを平行して、組み合わせ理論のさらなる検討を進め、コンピューター計算の速度向上による計算精度の改善について取り組む。 欧州では,大きく分けて,デジタルサービス税(Digital Service Tax:DST)とデジタル利益税(Digital Profit Tax:DPT)の導入が検討または実施されているが,利益配分に関わる技術的困難さはあっても,後者による努力を怠るべきではないと考えられる。サービス収益を課税標準とするのであれば,それは売上税あるいは消費税の範疇に属するものとなり,直接税である法人税とは別種の間接税として,累積課税の除去等の対応が不可欠となる。そのため,法人税については,あくまで法人所得課税の枠内で規律を図ることが望ましいという考えに基づいて研究を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、リモートでは実施できない研究会および学会が中止に追い込まれたことや、海外出張に出られないことにより、研究計画に遅れが生じたため、次年度使用額が生じたものである。 今年度は、新型コロナウィルスの影響が改善することが予想され、研究会や学会を対面実施できる見込みであることから、学会において担当している本課題に関連する研究を進める予定である。
|