コンピューターの計算能力とアルゴリズムの発達は、課税の有無や税率を考慮した投資組合せの最適解を、高速かつ正確に探し出すことを可能にしている。 BEPS報告書は、租税条約の濫用の防止、ハイブリッド・ミスマッチの緩和、税源浸食の制限、有害な税制競争の防止、移転価格の文書化など幅広い対応を進めてきたが、これらの措置の有効性は依然として疑問である。OECD/G20の国際的合意およびEUにおけるCCCTBとその後継のBEFITのいずれによっても、税率の相違は完全には解消せず、また租税条約も存在し続けることになる。そのため、国際税ネットワークにおける経路探索という誘因は、弱まりながらも残り続け、今後も税負担経路探索の誘因となりうるだろう。 国際税ネットワークに関する先行研究では、配当に関する最小税負担経路探索が中心であったが、それは現状のコンピュターの計算能力とアルゴリズム開発が発展途上にあるがゆえの制約である。 将来、現在のコンピューターに代わり、量子コンピューターが普及すると、組合せ爆発はいともたやすく解決することになることが予想される。現在のコンピューターと量子コンピューターを比べたとき、あらゆる計算において量子コンピューターが優れているというわけではない。 手計算をコンピューター計算化することをデジタル化と言うならば、量子コンピューター計算化することはデジタル化2.0とでも言うべきものとなり、それは組み合わせ計算などの特定の分野において、計算時間が劇的に短縮され、現状では不可能な計算が可能となるだろう。それを見据えた税制の構築とともに、国際協調の枠組みを絶えず維持、発展させることが欠かせない。
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