近年の製造業は、製品のコモディティ化、需要の減退、コロナの影響等によってますます厳しい競争に晒されている。そこで、多くの製造業者は、単なるハードウェアの提供事業者からハードとソフトを組み合わせたソリューション・サービスの提供事業者へと転換を図っている。このような製造業のサービス化現象を「サービタイゼーション」という。サービス化ないしサービタイゼーションの戦略に対応した管理会計研究は、レベニューマネジメントにおける新展開であるといえる。したがって、従来のレベニューマネジメントに対して、サービタイゼーションの研究を「拡張されたレベニューマネジメント」を表現することもできる。近年では、日本管理会計学会におけるスタディグループでも取り上げられるなど、サービタイゼーション研究は少ないながらも蓄積されつつある。とりわけ管理会計分野では、世界的にみても我が国における研究蓄積が増えつつあるといってよい。 本年度は、前々年度・前年度に引き続き、文献研究を中心に、サービス化戦略を適切に策定・実行するために必要な管理会計システムを模索し、その整理を試みた。ごく僅かなインタビュー調査のみしか実施することが困難であったことが大きな理由である。 サービタイゼーション管理会計研究はまだ始まったばかりであるが、日本管理会計学会におけるスタディグループでも取り上げられ、原価企画およびライフサイクル・コスティングとの関連で、多くの議論が行われた。とりわけ、サービタイゼーションを持続可能性の観点から解釈したPSS(Product-Service System)を取り上げことが大きい。PSSの類型化、通常の製品を対象にした原価企画との相違、伝統的なライフサイクル・コスティングを適用することの限界といった、サービタイゼーション管理会計研究における検討課題を明らかにした。
|