研究課題/領域番号 |
19K02001
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
向 伊知郎 愛知学院大学, 経営学部, 教授 (20308761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際財務報告基準(IFRS) / 国民性 / ソーシャル・キャピタル / 国際比較 / 利益の質 / 資本コスト |
研究実績の概要 |
2019年度は、当該研究の初年度である。本研究の目的は、各国の会計制度の特性とそれらの国々の企業(集団)の特性を評価して、世界の資本市場への参加者が国際財務報告基準(IFRS)の適用企業の財務情報を用いて経済的意思決定を行う分析モデルを構築、検証して、提言することにある。 当年度には、この研究目的において、特に国民性と会計情報との関係について検討した。研究課題に関して、3編の研究論文(うち1編は英文)を公表し、2回の海外での学会発表を行った。 これらの研究では、国民性は自らが以前に測定をした先進諸国7カ国についての測定値を用いて、それらの国民性が利益の質および資本コストにどのように影響を及ぼすかについて、実証分析から明らかにした。分析結果では、国民性を構成する要素の信頼性が利益の質および資本コストに影響を及ぼしていて、国民性を考慮せずに会計基準の相違だけを考慮した分析結果とは異なったものになることが明らかになった。具体的には、国際財務報告基準(IFRS)を適用している企業の間でも、社会的信頼性の低い国の企業ほど、利益の質は高くなること、および資本コストは低くなることが明らかになった。 また、これらの研究を行ったことで明らかになった問題に関する研究も行っている。具体的には、これまでの研究では、国民性の測定値が先進諸国7カ国に限定されていて、発展途上国を含めていないこと、および先行研究には多くの国を対象として文化の視点から国際比較したものがあり、国民性が時代とともに変化することが一般に理解されていないといった問題である。そこで、測定対象を世界53カ国に拡張して、1990年代および2000年代の国民性の測定を行うことで、国民性は時代とともに変化しており、先行研究における測定値を現代の研究に用いることは適切でないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に進んでいる。 国民性と会計情報との関係についての先行研究のレビューおよび先進7カ国間での国民性と利益の質および資本コストとの関係についての比較研究は完了した。 これらの研究を行うことで新たな問題が明らかになったことから、世界53カ国についての国民性を1990年代と2000年代の間での比較研究も行うことができた。一方で、新たな問題への対応に時間を費やしたため、ESG情報と財務情報との関連に関する先行研究のレビューが若干少ない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、ESG情報と財務情報に関連する先行研究の整理と分析を行ったうえで、データベースを用いて、ESGへの対応についての企業間比較を行う予定である。 課題は、各企業のESG情報開示の比較に必要なデータベースであるが、現在のところ、FTSEのものが利用可能かどうかを調査している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には、当初、1度の国際学会での発表と英文ジャーナル執筆に関する英文校正料の支払いを予定していたが、研究が順調に進んだため、2度目の国際学会での発表と英文校正料の支払いを行うために、前倒し予算請求を行った。 一方、残額が生じた理由は、2度目の英文ジャーナルへの執筆に関する英文校正手続きを行わなかったためである。 次年度への繰越額は、前倒し予算請求で使用予定であった英文ジャーナルへの投稿のための英文校正料として利用する予定である。
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