研究課題/領域番号 |
19K02002
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
近藤 隆史 京都産業大学, 経営学部, 教授 (60336146)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | マネジメント・コントロール / 業績評価 / コンピュータ・シミュレーション |
研究実績の概要 |
研究課題のもとで,昨年度に引き続き,マネジメント・コントロール,特に,業績評価システムを分析の対象として,その設計や効果についての理論構築および経験的データ(シミュレーション)による検証を行ってきた。一連の課題遂行の中で,(1)「LOCのコンフィギュレーションの探索: NK適合度地形モデルによる検証」『原価計算研究』(2020-08,44(1),46-60),(2)「業績情報に基づく模倣を通じた相互作用に関する 探索的研究」『管理会計学』(2021-03,29(1),1-17)の成果が得られた。具体的に,(1)については,NK適合度地形モデルを応用して,適合度の高い戦略創発を主目的とする,マネジメント・コントロールである,LOC(Levers of Control)のコンフィギュレーション(目的・性質の異なるコントロールシステムの組み合わせ)をトップマネジャーが探索する動的な過程をコンピュータ上で,シミュレーションした。トップが個々のコントロールシステムを操作する際に依拠する基本方針が,コンフィギュレーションの適合度や均衡に至る過程に影響を及ぼしていることを明らかにできた。一方,(2)については,業績情報に基づく組織メンバーの模倣行動による情報の形成と普及の解明のため,理論的モデルの構築とそのシミュレーションの手法を適用した探索的研究である。特に,個人レベルでの(他者からの)模倣の成功確率の影響に焦点を合わせた。分析の結果,模倣の成功確率がわずかでもあれば,高い情報の有効性・普及度が得られる一方で,情報の有効性 に対する成功確率の効果は逓減するなど興味深い発見が得られた。本稿は,業績評価におけるミクロ(個人)レベルの学習とマクロ(組織)レベルの学習とが結びつくメカニズムの解明に一定の知見をもたらすことで,今後の管理会計研究における学習概念拡張の可能性を提示している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の成果面としては,先に上げた研究論文2本(両方とも査読付き)という形で出すことができたものの,本来であれば段階的に行うことを予定していた国内外での学会報告・研究会での報告,あるいは経験的データ収集といった研究活動に関しては十分にすすめることが困難な状況であったため,この点に関して言えば,研究課題の進捗状況としては,やや遅れていると考えられる。次年度では,状況を十分に見定めながら可能な限りで,バランスを保てるよう研究を遂行していく必要があると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた研究成果(例えば,「LOCのコンフィギュレーションの探索: NK適合度地形モデルによる検証」『原価計算研究』(2020-08,44(1),46-60)および「業績情報に基づく模倣を通じた相互作用に関する 探索的研究―コンピュータ・シミュレーションによるアプローチ―」『管理会計学』(2021-03,29(1),1-17)など)をもとにして,さらに,管理会計研究(マネジメント・コントロール研究)における数値実験あるいはコンピュータ・シミュレーションの利用の可能性について検討していくことを考えている。具体的には,第一に,前年度より引き続き広く先行研究を考察に加えながら,理論的枠組の構築をすすめていくことである。第二に,そうした理論的枠組をベースにして,シミュレーションモデルの開発と理論の頑健性の検証(理論の検証)や新たな発見事実の蓄積を試みることである。例えば,今回得られた直近の成果との関連で言えば,管理者のタイプとLOCのコンフィギュレーションの探索・収束についての経験的なデータの取得などが考えられる。更に,最終年度に向けて,研究成果について,(上でも述べたとおり)状況を十分見定めながら,国内外でも報告など行うことなどを検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた大きな理由としては,当該年度に予定していた学会報告や調査などに伴う研究旅費が執行ができなかったためであり,次年度において状況を見ながら計画を調整しながら遂行することを予定している。
|