研究課題/領域番号 |
19K02009
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
高橋 賢 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (50282439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アイドル・キャパシティ / 産業クラスター / ネットワーク組織 / 資源の相互活用 |
研究実績の概要 |
今年度はネットワーク組織におけるアイドル・キャパシティ・マネジメントについて研究を進めた。アイドル・キャパシティの問題は,ミクロの視点からみると個々の企業や組織が抱える遊休能力の問題,マクロの視点から見ると,耕作放棄地や休耕田といったものが想定される。それらが引き起こす社会的課題の解決に向けたキャパシティの有効活用の問題に取り組んだ。 個々の組織においてアイドル・キャパシティが存在する場合,それは往々にして市場性のないアイドル・キャパシティとなっており,有効活用ができない状態になっている。しかしながら,産業クラスターなどに見受けられる集積を行うことにより,個々の組織にとっては市場性がないアイドル・キャパシティでも,集積し,ネットワーク組織を形成すると,組織の枠を越えた資源の相互利用が可能となり,それによって市場性がないと判断される要因である営業力の不足や,イノベーションの不足,ケイパビリティの不適合といった問題が解消され,市場性のあるアイドル・キャパシティに転換させることが可能となるということを解明した。ネットワーク化のモデルとして,面の集積と立体の集積というモデルを構築した。前者の例として大田区の仲間まわし,東大阪市の仲間型取引ネットワークを,そして後者の例として熊本県食料産業クラスター協議会をとりあげ,分析した。前者のケースでは,キャパシティのシェアリング等が行われ,個々の工場では引き受けられない受注を受けることができるという集積によるスケールメリットが働くことがわかった。後者のケースでは,耕作放棄地や休耕田を,新しい米粉という新商品を作るための知識,技能,技術を集積することで,有効活用することができるということがわかった。 いずれのケースも,これからの少子高齢化および人口減少,とりわけ労働生産人口の減少に係わって生じる社会的課題の解決のヒントになると予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で思うように実態調査ができなかったが,その分文献や過去の調査の棚卸をすることにより,社会的課題に対する処方箋としての資源の相互活用のモデルが構築できた。とりわけ,集積のタイプによるアイドル・キャパシティの転化という所に着目し,既存のキャパシティ・モデルを改良して拡張することによって社会的課題の解決に向けたモデルを構築できた点は,当年度の大きな成果であったといういうことができる。
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今後の研究の推進方策 |
当年度に構築したモデルを実証するために,実地調査を増やしていく予定である。とりわけ,面の集積である工業地帯,そして立体の集積である産業クラスターに対して実地調査を行い,当年度に構築したモデルの適用可能性を検証するとともに,さらなる改善を施して,研究を完成させる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により国境県境をまたいだ実地調査が制限され,また,学会の開催もほぼリモートになったため,旅費を使うことができなかった。 2022年度は移動制限が緩やかになると予想されるため,実態調査を数多く入れていく予定である。
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